先に来たものは、壁際の自分の机を文庫と一所におろして、自分の席にもって行きますが、その時、先輩の人の机も並べておきます。あとから来た先輩はそれを見て鄭寧(ていねい)にお礼をいいます。これが小さい子には非常に嬉しかったものです。子供たちは先生からも教わりますが、塾長という、教生格の先輩が、先生に代って教えたり、注意したりもします。この「朝読み」の素読の声で、子供の頭の良し悪しはたいてい分ったもので、大勢の中で、「あれは誰さんの声」などといわれるようにハッキリしたのは、必ずしも大きい声ではなくても、際だって出来のいい子にきまっていたそうです。(『武家の女性』山川菊栄)
日本近代史