こんなことがあった。與一〈よいち〉の友達に、いわゆる部落出身者がいた。與一は、この友達と良く遊び、ときには、部落に行って飯まで食べて帰って来る。家の者に色々注意されると、
「同じ人間じゃ、何も変わっとりゃせん。変な目で見たら、誰でも変に見える」
と答えて、家の者の言うことをきかなかった。この性格は終生変わらず、植民地であった台湾でも、漢民族や原住民族に接するときには、一人の同じ人間として付き合っている。この人間性が、後に、異民族の人達からも尊敬される八田與一の根底を成している。
(『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古川勝三)
日本近代史