ある思想の基礎的な土台は他者の思想なのであって、思想とは壁の中にセメントで塗り込められた煉瓦なのである。もし思索をめぐらす存在が自己自身を振り返ってみるときに、一つの自由な煉瓦を見るだけで、この自由という外見を手にするためにその煉瓦がどれほど高い代価を支払っているかを見ないとすれば、それは思想にはよく似てはいるがその模像にしか過ぎないのである。なぜなら彼は手を加えられぬまま放置されている空地とか、残骸や破片の山積みを見ようとしないのだから。しかし実は彼は、臆病な虚栄心のせいで、その自分の煉瓦を後生大事に手にしたまま、そのような空地や残骸の山に遺棄されているのである。(『宗教の理論』ジョルジュ・バタイユ:湯浅博雄訳)
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