「このところのイスラエルのやり方には、もう我慢ができません。女も子どもも構わず殺します。ルールがありません」
検問所で迂回しようとして殺された妊婦さんの夫の話はここでも出ました。
「2日前は、なんの理由もなく男の子を撃ち殺しました。しかもチェックをすませ、通行を許可した後に、背後から撃ったのです。
ラマラでは、病院が攻撃されました。
シャロンは『殺せるだけ殺せ』と発表しています。信じられません。これは一国の政策なのです。なぜこの国ではこのようなことが行われるのでしょうか?
また、封鎖のために農業が陥っている問題についてもお伝えしなければなりません。まず農業のための肥料や飼料が届きません。また作物を持ち出すことができず、産業として成り立ちません。
この街の多くの市民は、オリーブを原料としたオイルや石鹸の製造と販売で生計を立てていますが、私たちはオリーブの収穫に行くことができませんでした。
イスラエル軍によって畑へ出るのを阻まれたり、畑を荒らされたりしたのです。しかも大切なオリーブの木を次々戦車でなぎ倒していくのです。もちろん他の収穫物についても同じです。
それから教育機関が動きません。学校への攻撃も容赦がありません。
もっとも深刻な状況に追いやられているのは市民の生活そのもの、子どもの命、そして私たちの未来です。
けれども本当に残念なことは、もっとも残念なことは、世界の国々が、特にアラブ諸国がただこの状況を見ているだけであるということです。見て見ぬふりをしているのかもしれません。
無反応であるということは、無関心であるということは、無視され続けるということは、軍事攻撃を受けるということと同じように私たちを苦しめ続けます。
ですから、あなたがたの訪問は、私たちを前向きにさせてくれ、少しだけ楽観的な気持ちにさせてくれます」
私は、話し続ける彼の目に吸い込まれそうになっていきました。この瞬間に、私は、今自分がここにいる意味と、大変な責任を負っていることを自覚しました。(※発言者はナブルスの知事と思われる)
(『「パレスチナが見たい」』森沢典子)