一年半、諸君は短促(たんそく)なりといはん、余は極めて悠久なりといふ。もし短(たん)といはんと欲せば、十年も短なり、五十年も短なり、百年も短なり。それ生時(せいじ)限りありて死後限りなし、限りあるを以て限りなきに比す短にはあらざるなり、始よりなきなり。もし為すありてかつ楽むにおいては、一年半これ優に利用するに足らずや、ああいはゆる一年半も無なり、五十年百年も無なり、即ち我儕(わがせい)はこれ虚無海上一虚舟(きょむじょうかいじょういちきょしゅう)。(『一年有半・続一年有半』中江兆民)
セネカ