しかしアメリカ合衆国の主たる挫折は、現段階においてはイデオロギー的かつ外交的なものである。というのもアメリカは、いよいよ世界支配を完成しつつあるどころか、世界の統制権を失いつつあるからである。自由世界のリーダーとして立ち現れるどころか、アメリカ合衆国は国連の意向に反してイラク攻撃を開始した。これは国際法の蹂躙であり、正統(ママ)性の失墜はだれの目にも明らかである。(『帝国以後 アメリカ・システムの崩壊』エマニュエル・トッド:石崎晴己訳)