長途の旅で疲れている。心なしか4年前、市ケ谷の法廷で見た時より、少しやせてみえる。だが、それにもまして、澄んだ大きな眸(ひとみ)の底に、鋭い刃物のような、むしろ近づきがたい光をたたえているのが気になる。博士はニコリともしない。なつかしい日本への追想、というよりも、なにかおさえがたい憤怒に燃えているといった表情であった。待ちうけた記者団を前に、待合室のベンチに腰をおろした博士は、
「このたびの大戦の最も大きな災害、最も大きな犠牲は“真理”である。われわれはこの真理を奪い返さねばならぬ」
(『パール博士「平和の宣言」』ラダビノード・パール:田中正明編著)
パール判事/日本近代史