私自身が2010年以降に「ブラック企業」という言葉を意識するようになる上で、決定的に重要だった出来事がある。それは、リーマンショック以降の2009年2月、3月ごおに寄せられた若年正社員からの大量の相談である。この時期、正社員の若者が次々と相談に訪れたのだ。それまでも、非正規雇用者と同じだけ若年正社員からの相談が寄せられており、どれも深刻なものばかりだった。だが、09年のこの時期からは、明らかに若年性社員の扱いの変化が感じ取れた。それは「使い捨て」と呼ぶにふさわしい扱いを、若年性社員は受けているという実感である。あるいは、すでに変化していた正社員雇用の性質が、それまでの好景気の中では見えず、リーマンショックを契機としてあらわになったといってもよいだろう。(『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴)