思い出すのは、業界と結びついて厚労省が行った「介護予防事業」である。介護予防は、民間の団体が補助金を湯水のように使って、高額な機器をそろえ、要介護度の低い老人を無理やり一堂に集めて、「パワーリハ」と称する健康体操まがいの指導をした。
リハビリの専門知識もなしに始めたこの事業は、瞬く間に馬脚を現し、見事に失敗した。施設は今閑古鳥が鳴いて、高額な装置は埃をかぶっている。リハビリ医学の常識を無視した施策は、税金を使って業者を潤わせただけの事業となった。
理念も科学的根拠もなしに、日数だけで患者を振り分けて、とりあえず介護保険に誘導する。それに必要な高額な予算は、新規事業として認める。介護予防の二の舞になりかねない。
設備も人員も、新設には金がかかる。そこに群がる介護業者には事欠かない。新たな利権が生まれる。
(『わたしのリハビリ闘争 最弱者の生存権は守られたか』多田富雄)