また、原因別に見てみると、病苦等11499人、経済生活問題6058人と続く。実は、この数字にはトリックがあり、自殺そのものには犯罪性がないために警察の念入りな捜査による真相究明ができず、家族などの「そういえば病気を苦にしていた」といった曖昧証言がそのまま自殺原因とされるケースがほとんどだ。この問題については、後ほどあらためて詳しく取り上げたいが、そんなことを割り引いて考えれば、実質的には、経済生活問題が一番の原因となる。
昔から、自殺者数の推移は、世の中の状況と密接にかかわってきた。不景気になると自殺者が増え、景気がよくなると自殺者が減るという繰り返して、まれに見る激増を示した平成10年のデータも、なかなか出口が見えない。長引く平成不況の影響なしには語ることはできまい。
(『自殺死体の叫び』上野正彦)