デパートは、そもそも「百貨店」とうい、およそ汗くさい、どうにもよろず屋的なバッタ商売の英訳に過ぎない言葉であり、歴史的に見れば「闇市」の発展形として成立した、一種のハイパー闇市なのだ。
疑うのならまわりを見回してみるが良い。
T急、S武は地上げ屋の出店だし、M越は呉服屋出身の高利貸しがおっ建てたものだ。T島屋だって、もとはといえば闇屋まがいの商売をやっていたS木屋を乗っ取って出来上がった店にほかならない。
とすれば、いまだにアメ横じみた闇市臭を遺しているアブアブ赤札堂は、むしろデパートとしての出自に忠実な、王道を行く店なのである。
(『山手線膝栗毛』小田嶋隆)