ところで、倒れている人間の下に描いてある竿にとまったトリ――このトリを、なぜ描いているのだろうか。原始美術の研究者の間でいろいろ論議されているようだが、次のように考えたらどうだろうか。
 その時代の原始人は、肉体のほかに、霊魂の存在を考えていた。生きているときには、肉体に宿っているが、死ぬと肉体から抜けだしてゆく。そして、それはトリと化して飛びさってゆくのだと。
(『脳の話』時実利彦〈ときざね・としひこ〉)

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