そういえば家の者も私が自転車を買ってきたというので見に来て、「なによ、コレ」と軽蔑したような顔をした。あっけないぐらい小さいし細くて頼りない。スタンドも荷台もない。けばけばしく歯車だらけでもない。彼女の抱いている自転車の観念に照らせば10万円の自転車がこんなものであるはないのであった。ものごとは、起きるときは常に内憂外患の様相を呈するものであって、今回もそれであった。(『こぐこぐ自転車伊藤礼〈いとう・れい〉)

ロードバイク