今ふり返ってみると、あのときから8年の年月がたっている。走り始めた時私は68歳だった。最初の経験の激しさにかかわらずそのあとも走り続けたのはなぜですか、と、ときどきひとに訊かれる。私自身にも確たる理由は分からないが、結局は自動車のようにかさばらない乗り物で知らないところをゆっくり走れるのが楽しくて、ということなのだろう。(『自転車ぎこぎこ伊藤礼〈いとう・れい〉)