山家集』を読めばすぐ明らかに分るように、西行はふかく桜に魅入られた人間であり、数知れぬほど多く桜の歌を作っている。それに関して見逃しえないのは、散る桜、散る花を詠じたものがきわめて多いということに他ならない。西行はただ枝々に咲きつづけ、咲きとどまる花を歌ったのではなかった。(『西行』高橋英夫)