理念的な原理・原則は人間の脳の働きである。人間の脳の中で考えた原理・原則など、自然が機嫌を損ねれば吹き飛んでしまう。自然のご機嫌がくるくる変わる日本列島で生きていくには、自然に合わせめまぐるしく変化しなければならなかった。
多くの識者が「日本人は確たる原理・原則を持たない」と指弾する。その通りだから誰も反論できない。しかし見方を変えれば、気ままで巨大な自然の支配下でしぶとく生きてきた日本人の強靭さの秘密は、この融通無碍な無原則性に潜んでいた。
(『日本文明の謎を解く 21世紀を考えるヒント』竹村公太郎)