天台本覚思想は、日本独自の天台思想である。この天台本覚思想は、インド中国にはもちろんなく、最澄にすらなく、良源源信以後に日本でつくられたものであろうが、この煩悩がすなわち菩提であり、煩悩を離れて菩提はないとする天台本覚思想は、鎌倉時代の新仏教ばかりか、日本の文学・芸術を考えるにあたっても、重要な意味をもつ思想である。(『絶対の真理〈天台〉 仏教の思想5』田村芳朗、梅原猛