大正時代までの東京人は、「江戸ッ子」と呼ばれるのを得意にし、気前が好くて、任侠精神があって、人情の機微が判って――等々、好い事ずくめの褒め言葉が並んだものだ。「江戸ッ子」の反対が田舎者で、田舎っぺと呼ばれるのが最大の侮蔑であったのも、「江戸ッ子」が尊敬される証拠であった。(『人情馬鹿物語』川口松太郎)