西欧には、数学的真理は
数学者が創造したものなのか、それともすでに存在していたものが彼らによって暴かれただけなのか、という論争が昔からある。
ラマヌジャンは紛れもなく後者の陣営に属していた。数字とその数学的な関係式は宇宙の成りたちを知るための重要な手がかりだ、と彼は考えていた。新しい定理が発見されるたびに、底知れぬ無限の断片がひとつずつ明らかにされてゆく、と。従って「神についての思索を表現しない方程式は僕にとって無価値である」と友人に語ったときの彼は別に愚かだったわけでも、巫山戯(ふざけ)ていたのでも、洒落(しゃれ)気があったわけでもなかったのである。(『
無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』
ロバート・カニーゲル:
田中靖夫訳)