ここで注意したいのは、当然だが、死亡保険金を受け取るには必ず死体検案書(死亡診断書)が必要なことだ。この点からすると、たとえば富士山の青木ヶ原樹海などで人知れずこっそり死のうなどというのは、ロマンチックではあるが非常に独りよがりな自殺方法だといえるだろう。死体が見つからなければ、当然死体検案書は出ないし、死亡届も出せない。
遺族は死亡保険金がもらえないばかりか、「行方不明者」とされたあなたの財産を売買したり名義変更することもできない。婚姻者がいれば、相手はそのままでは再婚できない状態になる。
それが7年続けば、「失踪宣告」をしてやっと死亡したことにしてもらえるが、死亡保険金に関していえば、その7年間遺族は保険料を払い続けなければもらえない。平均年間保険料の61万円で換算すれば、61万円×7年=427万円が無駄になるのだ。
(『自殺のコスト』雨宮処凛)