たとえば他の悲しみだが、これが本当にわかったら、自分も悲しくなるというのでなければいけない。一口に悲しみといっても、それにはいろいろな色どりのものがある。それがわかるためには、自分も悲しくならなければだめである。他の悲しみを理解した程度で同情的行為をすると、かえってその人を怒らせてしまうことが多い。軽蔑(けいべつ)されたと感じるのである。(『夜雨の声岡潔:山折哲雄編)