アインシュタインの「神はさいころを振らない」という有名な言葉は、このホテルで口にされた。ボーアの反応は、世の掟を定めるのは科学の負うべき役目ではないという科学者たちの大いなる挫折感を、正面から見据えたものだった。「アインシュタインよ、神ななさることに注文をつけるな」とボーアは言い放った。
 ふたりとも、この論争に満足な決着を見ないまま世を去った。
(『まだ科学で解けない13の謎』マイケル・ブルックス:楡井浩一訳)