ところが夜中に彼は、絶叫をあげて立ちあがって半ば醒めた。おそろしい夢を見たのだった。
夢は、夢のようにはかなく消えて無くなるものだが、この夜の夢はキアラがくりかえしくりかえし考えてみたので、隅々まではっきりと残った。彼が幼いころにスペインで見たヒエロニモス・ボッシュの絵のようにあざやかだった。黙示録に記してある光景のようにすさまじかった。
彼は夢みた。――ほぼ300年後に、物質をエネルギーに転化するという、デウスの創造の秩序を根底から破壊することが行われる。キリスト教はそれに対して無力である。ただ祈っているだけである。むしろ、それを発明した者共を、何か秘蹟を実現してみせた者として讃美する。デウスの力はかくのごとく合理的には判断できないものであると……。
(『みじかい命』竹山道雄)