本書の目的は、ごく簡単なことだ。今日の科学は、「なぜ何もないのではなく何かがあるのか」という問題に、さまざまな角度から取り組めるようになっているし、現に取り組みが進んでいるということを知ってほしいのである。そうして得られた答えはどれも――それらは驚くばかりに美しい実験で観察され、現代物理学の屋台骨というべき理論から導かれたものだ――何もないところから何かが生じてもかまわないということをほのめかしている。かまわないどころか、宇宙が誕生するためには、何もないところから何かが生まれる必要がありそうなのだ。さらには、得られている限りの証拠から考えて、この
宇宙はまさしく、そうやって生じた【らしい】のである。(『
宇宙が始まる前には何があったのか?』ローレンス・クラウス:青木薫訳)