東京の三鷹光器といえば、小企業ながら日本一の天体望遠鏡にはじまって、いまでは脳外科手術用の顕微鏡メーカーとして国際的にも知られているが、かつて世界ではじめて100万分の1ミリ精度の測定器を作ったことがある。ちょうどその開発中に訪問したわたしは、創業者の中村義一さんに「いまのところはばらつきが出て不安定なので、100万分の3ミリを達成と書いておいて下さい」と言われて、自分の原稿にその通り書いた。ところがその本が店頭に並ぶ前に、NHKのテレビ番組が、100万分の1ミリを達成と伝えたのでびっくりした。不安定の原因は測定器の水平を支える4本のねじのうちの1本に、かすかなガタがあるからだと判明したという。(「解説」小関智弘〈こせき・ともひろ〉)『ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語』ヴィトルト・リプチンスキ:春日井晶子訳