チャーリーを車から出した。と、いきなり灰色の物体が飛び出してきた。怒気をあらわにした生き物である。それは松を切り払った空き地を一直線に横切り、家の中へと突っ込んでいった。それがジョージだった。彼は私が来たのを喜んではいなかったし、チャーリーについてはなおさらだった。
まともにジョージを見る機会はまるでなかったが、いたるところで彼の不機嫌な気配を感じた。この灰色の老猫には人や物への憎しみが強烈に積み重なっているので、たとえ上の階に隠れていても出て行けという悪態が伝わってくるのだ。もしも爆弾が落ちてきてミス・ブレイス以外の生き物を全滅させたとしたら、ジョージは幸せになるのだろう。彼が世界を支配できたらそうするはずだ。
(『チャーリーとの旅』ジョン・スタインベック:竹内真訳)