たとえば、クライアントのお話を聞いていくうちに、むしろ周りにいる人たちの方が病んでいるんじゃないかと思えてくることもありあす。その人自身が病んでいなかったからこそ、歪(ゆが)んだ周囲に反応して具合が悪くなっていたり、また、日本の精神風土に【染まり切れない】ために不適応が起こっているようなケースもある。さらには、現代社会の不自然さに対して馴染(なじ)めないために苦しんでいる人もいる。
 そういうわけで、本人と環境の、そもそも一体どちらが問題なのかということについては、そう簡単に判断することはできません。違和感を覚えないで生きている多数派の方がすなわち健康、と考えるのはあまりに早計でしょう。
(『「普通がいい」という病 「自分を取りもどす」10講』泉谷閑示)