しかし、債権者/債務者の関係は「社会的諸関係に直接働きかける」だけにとどまらない。なぜなら、この関係はそれ自体が権力関係であり、現代資本主義のもっとも重要で普遍的な様相の一つだからである。クレジット(信用貸し)あるいは負債、そして債権者/債務者の関係はある特殊な権力関係をなし、主観性の生産と統制の特殊な様態(「経済的人間」〔ホモ・エコノミクス〕の特殊な携帯としての〈借金人間〉〔ホモ・デビトル〕)をもたらす。債権者/債務者の関係は、資本/労働、福祉国家/利用者(ユーザー)、企業/消費者といった関係に重ねあわされ、それらの関係を貫いて、利用者(ユーザー)・労働者・消費者を〈債務者〉に仕立て上げる。(『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学マウリツィオ・ラッツァラート:杉村昌昭訳)