それでも、敗戦の瓦礫の中から祖国を復興するために、経済再建の意気に燃えていた頃の自民党には、理想と教養を持つ政治家もいて保守合同に参集したが、経済力がついた70年台に政界が利権の漁場になるに従い、愚民政治による社会の退廃が急速に進み、経済の拡大に反比例して社会倫理が衰退し、政権担当は既得権擁護のためになり果てた。
田中内閣による金権政治の横行に続いて、中曽根内閣で表と裏の社会が逆転した後は、竹下内閣で暴力団の影響が政策を動かしたので、政治の場は利権取引の舞台にと変貌した。その結果、国会の議席は二世と官僚出身がほぼ占有し、隙間を人気稼業のタレント候補が埋める形で、議会の多数派を利権屋が支配したために、日本の政治から理想や教養が雲散霧消して、国政の関心は数合わせと利権配分になった。
(『夜明け前の朝日 マスコミの堕落とジャーナリズム精神の現在』藤原肇)
朝日新聞