それはまさしく奇跡だ。
脳のどこか、あるいは体のどこかで、心的または肉体的な刺激――“グラスを持ち上げたい”“指を火傷しそうだから鍋を下ろさなくては”――が発生する。その刺激は神経インパルスを生み、インパルスは神経細胞(ニューロン)からニューロンへと手渡されて全身に伝達される。インパルスは、人々の多くが考えているのとは違い、電流そのものではない。ニューロンの表面の電荷がほんの一瞬だけ正から負に変わるときに生まれる波だ。インパルスの強さはつねに一定で――存在するかしないかのいずれかしかない――時速およそ400キロという驚異的なスピードを持つ。
(『12番目のカード』ジェフリー・ディーヴァー:池田真紀子訳)