わが国の二大政党制において最もよくある票割れの例は、スポイラー(有力候補の票を食う候補者)効果である。有力候補二人の接線の場合、トップを走る二人のうち片方から、第三党の「スポイラー」候補が票を奪ってしまうことで、競争相手の勝利が決まることがある。たとえば2000年の大統領選挙でこれは起こった。フロリダ州で、アル・ゴアジョージ・W・ブッシュの均衡を緑の党のラルフ・ネーダーが崩し、それによって勝敗が決まったのである。票割れは、選挙のプロセス全体をミスガイドする見えざる手だ。その結果、選挙民の意思の反映が弱められ、民主的プロセスへの信頼が失われ、金銭が浪費され、そして時には生命さえもが浪費される。
(『選挙のパラドクス なぜあの人が選ばれるのか?』ウィリアム・パウンドストーン)