炊事が奇しくも分けられた
 女の役目であったのは
 不幸なこととは思われない、
 そのために知識や、世間での地位が
 たちおくれたとしても
 おそくはない
 私たちの前にあるものは
 鍋とお釜と、燃える火と

 それらなつかしい器物の前で
 お芋や、肉を料理するように
 深い思いをこめて
 政治や経済や文学も勉強しよう、

 それはおごりや栄達のためでなく
 全部が
 人間のために供せられるように
 全部が愛情の対象あって励むように。

(『石垣りん詩集石垣りん

詩歌