今日、宗教は差別や意見の相違、不統一の根源と見なされることが多い。だがじつは、貨幣や帝国と並んで、宗教もこれまでずっと、人類を統一する三つの要素の一つだったのだ。社会秩序とヒエラルキーはすべて想像上のものだから、みな脆弱であり、社会が大きくなればなるほど、さらに脆くなる。宗教が担ってきたきわめて重要な歴史的役割は、こうした脆弱な構造に超人間的な正当性を与えることだ。そのおかげで、根本的な法の少なくとも一部は、文句のつけようのないものとなり、結果として社会の安定が保証される。
したがって宗教は、【超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度】と定義できる。
(『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ:柴田裕之訳)