また、バビロニア人が六十進法における位取り記数法を心得ていて、零にあたる記号をも、ある程度まで、用いていたことは、紀元前2世紀ごろ彼らによってつくられた満月の表から知られるのであるが、この記号は単に空位をあらわす純然たる記号だけにとどまって、計算には一切用いられることがなかった。のみならず、バビロニアのこの記数法は後代に伝えられて一般に普及されるということもなかったのである。(『零の発見 数学の生い立ち』吉田洋一)