養老●これもとてもおもしろいのですが、神経内科の医者であるオリバー・サックスという人が書いていますけど、聴覚の落ちた人を見ていて、非常にはっきりした特徴が二つあったというんです。一つは、彼らは因果関係の理解が非常に遅い。僕は昔から、因果関係は耳だと言っていたんですが、まさにそうなんです。耳というのは
情報が時間的に配列されますから、理屈を説明するときには直列に順々と説くんですよ。ところが目というのは直感的に、同時並列で、つまり「百聞は一見にしかず」というのはそのことで、同時並列でポンとわかる。ところが、耳が聞こえないと因果関係がつかめない。(『
「わかる」ことは「かわる」こと』
佐治晴夫、
養老孟司)