数年前、私は日本統治時代における朝鮮半島の歴史を調べていくうちに、「抗日パルチザン」といわれていた「金日成将軍」率いる組織の中に、「金策」〈キム・チェク〉というナゾの男の存在を知り、その正体を求めて“東北抗日連軍”を追求していくと、金策とは、大日本帝国が朝鮮半島の赤化防止のために残した「残置諜者」であり、金日成が師と仰いだ男であることが判明し、朝鮮戦争でも、前線指揮官として中央郡を指揮して勇猛果敢に戦ったことを知ったのですが、そこでハタと「朝鮮戦争とは一体何であったのか?」という疑問に突き当たったのです。
 朝鮮半島の赤化防止のために残された金策こと、畑中理〈はたなか・おさむ〉がこのままでは日本の将来は危険である、と恐れたとしてもおかしくはなかったでしょう。
(『大東亞戦争は昭和50年4月30日に終結した』佐藤守)
 グリフィンが他に先駆けて動物の認知(1980年代に入ってかなりたつまで、「動物」と「認知」はありえない組み合わせと考えられていた)を認める立場を擁護するようになったのも不思議ではない。認知とは情報処理以外の何物でもないからだ。「認知」は、感覚入力を環境についての知識に変えるという心的変換と、その知識の柔軟な対応だ。「認知」という用語がそれを行なうプロセスを指すのに対して、「知能」はそれを首尾良く行なう能力という意味合いが強い。(『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのかフランス・ドゥ・ヴァール松沢哲郎監修、柴田裕之〈しばた・やすし〉訳)
 寒山〈かんざん〉は木の葉に詩を題した。が、その木の葉を集めることには余り熱心でもなかったようである。芭蕉もやはり木の葉のように、一千余句の俳諧は流転(るてん)に任(また)せたのではなかったであろうか? 少くとも芭蕉の心の奥にはいつもそういう心もちの潜んでいたのではなかったであろうか?(『芭蕉雑記・西方の人 他七篇』芥川龍之介)
 弓削〈ゆげ〉は、あきれたような顔になった。
「変人だという噂は本当だったのですね」
「私は自分を変人だと思ったことはありません」
「とにかく、降格人事が繰り返されることがあっては損をなさるだけだと申しているのです」
「人事に損も得もないでしょう。どこに行っても、私は自分が正しいと思うことをやるだけです」
「不思議ですね」
「何がですか?」
「話をしているうちにだんだんと、あなたが本気でそうお考えのような気がしてくるのです」
「言ったはずです。本音です」
 弓削は、毒気を抜かれたような顔になった。
(『去就 隠蔽捜査6今野敏〈こんの・びん〉)
 公務執行妨害は、警察官にとっては便利な罪状だ。かつて、学生運動が盛んな時代、公安捜査員たちは、活動家を検挙するためん、「転(ころ)び公妨(こうぼう)」という手法を使った。
 二人組の公安捜査員が、活動家と思しき人物に職務質問をする。いきなり、一人の捜査員が「わっ」と叫んで転ぶ。もちろん、相手は何もしていない。
 すかさず、もう一人の捜査員が大声で言う。
「突き飛ばしたな。公務執行妨害の現行犯で逮捕する」
 そうして、身柄を引っぱるわけだ。
 これが、悪名高き「転び公妨」だ。
(『自覚 隠蔽捜査5.5今野敏〈こんの・びん〉)
「無事に解決したからいいようなものの、失敗していたら、おまえも俺も首だぞ」
「そんなに首が怖いのか?」
「何だって?」
「俺は、首よりも、やるべきことをやれないような事態のほうが恐ろしい」
(『宰領 隠蔽捜査5今野敏〈こんの・びん〉)
 本当に優秀な人間というのは、自分を過信しない。周囲の人間の助けを借りることも必要であることをよく心得ているものだ。(『転迷 隠蔽捜査4今野敏〈こんの・びん〉)
「普通の人間は、本音とたてまえを使い分けます。しかし、彼にはたてまえしかないのです。たてまえが本音なのです。竜崎にとって大切なのは原理原則です。どんなに複雑な問題に直面しても、彼は他人に迎合することなく、原理原則を貫き、結果的にそれが問題を解決することになるのです」(『初陣 隠蔽捜査3.5今野敏〈こんの・びん〉)
 弱い犬ほどよく吠えるというたとえのとおり、寡黙な者には注意をしなければならない。(『疑心 隠蔽捜査3今野敏〈こんの・びん〉)
 もし、これがアメリカの大統領や上院議員、州知事などだったら、私用だろうが公用だろうが出かけるときは、公用車を使うだろう。
 警備上の理由からだ。公用車というのは、使う人間の身を守るためにあるのだ。つまり、暗殺されたり誘拐されたりしたら困る人間を乗せるためのものなのだ。
 だが、日本ではまだ贅沢品と思われている節がある。危機管理の感覚の違いなのだろうが、野党や左翼系の市民団体などは、公務員や議員が私用に公用車を使うこと自体を問題視する。
(『果断 隠蔽捜査2今野敏〈こんの・びん〉)
 戦場にいる者は戦争の批判をしない。また、戦争に勝った者もその戦争の批判をしないものだ。(『隠蔽捜査今野敏〈こんの・びん〉)
 根本的に目の機能を回復させようと考えるのであれば、血流を促して「目を温めること」が大切なのです。(『驚くほど目がよくなる! たった10秒の「眼トレ」 「近視」「遠視」「老眼」が9割治る』日比野佐和子〈ひびの・さわこ〉、林田康隆監修)
 ミトコンドリアは細胞内にある小さな器官で、われわれがもつほぼすてのエネルギーをATP(アデノシン三リン酸)の形で生成する。平均的に言って、各細胞に300~400個存在し、人体全体では1京(けい)個(1京は1兆の1万倍)に達する。事実上すべての複雑な細胞には、ミトコンドリアが存在する。ミトコンドリアは細菌に似ていて、それは見かけだけではない。かつては自由生活性の細菌だったが、20億年ほど前、自分より大きな細胞のなかでの生活に適応したのである。(『ミトコンドリアが進化を決めたニック・レーン:斉藤隆央訳)
小林●ピカソにはスペインの、ぼくらにはわからない、何と言うか、狂暴な、血なまぐさいような血筋がありますね。ぼくはピカソについて書きましたときに、そこを書けなくて省略したのです。在るなと思っても、見えてこないものは書けません。あのヴァイタリティとか血の騒々しさを感じていても、本当には理解できないのです。(『対話 人間の建設小林秀雄岡潔
 快楽、喜び、笑い、たわむれ、そして悲しみ、苦痛、嘆き、涙。これらは脳でしか生まれないことを人間は知っておくべきだ……私たちを苦しめるすべてのものは脳から来ている……狂気は湿った脳から生じる。   ヒポクラテス
(『私はすでに死んでいる ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳』アニル・アナンサスワーミー:藤井留美訳)