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 公務執行妨害は、警察官にとっては便利な罪状だ。かつて、学生運動が盛んな時代、公安捜査員たちは、活動家を検挙するためん、「転(ころ)び公妨(こうぼう)」という手法を使った。
 二人組の公安捜査員が、活動家と思しき人物に職務質問をする。いきなり、一人の捜査員が「わっ」と叫んで転ぶ。もちろん、相手は何もしていない。
 すかさず、もう一人の捜査員が大声で言う。
「突き飛ばしたな。公務執行妨害の現行犯で逮捕する」
 そうして、身柄を引っぱるわけだ。
 これが、悪名高き「転び公妨」だ。
(『自覚 隠蔽捜査5.5今野敏〈こんの・びん〉)
 弱い犬ほどよく吠えるというたとえのとおり、寡黙な者には注意をしなければならない。(『疑心 隠蔽捜査3今野敏〈こんの・びん〉)
「無事に解決したからいいようなものの、失敗していたら、おまえも俺も首だぞ」
「そんなに首が怖いのか?」
「何だって?」
「俺は、首よりも、やるべきことをやれないような事態のほうが恐ろしい」
(『宰領 隠蔽捜査5今野敏〈こんの・びん〉)
 もし、これがアメリカの大統領や上院議員、州知事などだったら、私用だろうが公用だろうが出かけるときは、公用車を使うだろう。
 警備上の理由からだ。公用車というのは、使う人間の身を守るためにあるのだ。つまり、暗殺されたり誘拐されたりしたら困る人間を乗せるためのものなのだ。
 だが、日本ではまだ贅沢品と思われている節がある。危機管理の感覚の違いなのだろうが、野党や左翼系の市民団体などは、公務員や議員が私用に公用車を使うこと自体を問題視する。
(『果断 隠蔽捜査2今野敏〈こんの・びん〉)
「普通の人間は、本音とたてまえを使い分けます。しかし、彼にはたてまえしかないのです。たてまえが本音なのです。竜崎にとって大切なのは原理原則です。どんなに複雑な問題に直面しても、彼は他人に迎合することなく、原理原則を貫き、結果的にそれが問題を解決することになるのです」(『初陣 隠蔽捜査3.5今野敏〈こんの・びん〉)
 本当に優秀な人間というのは、自分を過信しない。周囲の人間の助けを借りることも必要であることをよく心得ているものだ。(『転迷 隠蔽捜査4今野敏〈こんの・びん〉)
 戦場にいる者は戦争の批判をしない。また、戦争に勝った者もその戦争の批判をしないものだ。(『隠蔽捜査今野敏〈こんの・びん〉)
 弓削〈ゆげ〉は、あきれたような顔になった。
「変人だという噂は本当だったのですね」
「私は自分を変人だと思ったことはありません」
「とにかく、降格人事が繰り返されることがあっては損をなさるだけだと申しているのです」
「人事に損も得もないでしょう。どこに行っても、私は自分が正しいと思うことをやるだけです」
「不思議ですね」
「何がですか?」
「話をしているうちにだんだんと、あなたが本気でそうお考えのような気がしてくるのです」
「言ったはずです。本音です」
 弓削は、毒気を抜かれたような顔になった。
(『去就 隠蔽捜査6今野敏〈こんの・びん〉)