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 宇宙はビットからできている。すべての分子、原子、素粒子が、ビットという情報を記録している。そして、これら宇宙の構成要素間のすべての相互作用が、ビットを変化させることでその情報を処理している。要するに宇宙は計算をしているのだが、宇宙は量子力学の法則に支配されているので、宇宙は本質的に量子力学的なやり方で計算していて、そのビットは量子ビットである。結果的に、宇宙の歴史は、今も続けられている巨大な量子計算ということになる。宇宙は量子コンピュータなのだ。(『宇宙をプログラムする宇宙 いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』セス・ロイド:水谷淳訳)
 アルキュタスはプラトンの友人で、常勝将軍と称えられた軍人にして政治家でもあり、音楽、天文学、物理学の分野で優れた仕事をし、古代世界ではきわめて高く評価されたピュタゴラス派の学者だった。そのアルキュタスが、「しかし、宇宙の果てとは何だろうか?」と問いかけたのである。
 もしも宇宙に果てがあるなら、なんとかしてそこまで行き、そこから外に向かって槍を投げたとしたら、その槍はどうなるのだろうか? 槍はこの世から消滅するのだろうか? それとも壁のようなものにぶつかって、はね返ってくるのだろうか? その壁はどれぐらい厚いのだろうか? 壁の向こうはどうなっているのだろうか?
 アルキュタスは槍投げのパラドックスにより、宇宙に果てがあるとすれば厄介な問題が生じるということを示したのである。
(『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』青木薫)
 熱力学の法則――物質のかたまりに含まれる原子の運動を支配する法則――は、すべての根底にある、情報についての法則だ。相対性理論は、極度に大きな速さで動いている物体や重力の強い影響を受けている物体がどのように振舞うかを述べるものだが、実は情報の理論である。量子論は、ごく小さなものの領域を支配する理論だが、情報の理論でもある。情報という概念は、単なるハードディスクの内容よりはるかに広く、今述べた理論をすべて、信じられないほど強力な一つの概念にまとめあげる。
 情報理論がこれほど強力なのは、情報が物理的なものだからだ。情報はただの抽象的な概念ではなく、ただの事実や数字、日付や名前ではない。物質とエネルギーに備わる、数量化でき測定できる具体的な性質なのだ。鉛のかたまりの重さや核弾頭に貯蔵されたエネルギーにおとらず実在するのであり、質量やエネルギーと同じく、情報は一組の物理法則によって、どう振舞いうるか――どう操作、移転、複製、消去、破壊できるか――を規定されている。宇宙にある何もかもが情報の法則にしたがわなければならない。宇宙にある何もかもが、それに含まれる情報によって形づくられるからだ。
 この情報という概念は、長い歴史をもつ暗号作戦と暗号解読の技術から生まれた。国家機密を隠すために用いられた暗号は、情報を人目に触れぬまま、ある場所から別の場所へと運ぶ方法だった。暗号解読の技術が熱力学――熱機関の振舞い、熱の交換、仕事の生成を記述する学問――と結びついた結果生まれたのが情報理論だ。情報についてのこの新しい理論は、量子論と相対性理論におとらず革命的な考えである。一瞬にして通信の分野を変容させ、コンピューター時代への道を敷いたのが情報理論なのだが、これはほんの始まりにすぎなかった。10年のうちに物理学者と生物学者は、情報理論のさまざまな考えがコンピューターのビットおよぎバイトや暗号や通信のほかにも多くのものを支配することを理解しはじめた。こうした考えは、原子より小さい世界の振舞い、地球上の生命すべて、さらには宇宙全体を記述するのだ。(『宇宙を復号(デコード)する 量子情報理論が解読する、宇宙という驚くべき暗号』チャールズ・サイフェ:林大訳)
 宇宙ひもは、前に紹介したひも理論の“ひも”と混同してはなりません。まったく無関係と言うわけではありませんが別物です。宇宙ひもは長さをもつ物体ですが、その断面はごく小さいものです。宇宙ひもの存在は、素粒子のいくつかの理論で予言されています。宇宙ひもの周りの時空は平坦です。しかしそれは、ひもの場所に端があるクサビ型の時空が切り取られたような時空で、時空そのものが平坦なのです。つまり円錐のようなものです。紙で大きな円を造り、ピザからスライスを切り出すように、その円からくさび状の部分を切り出すのです。切り取った紙片は捨て、残ったほうの紙の端を糊でくっつけると、円錐ができあがります。これは宇宙ひもが存在する時空を表わしています。(『ホーキング、未来を語る』スティーヴン・ホーキング:佐藤勝彦訳)
 デカルトはこのように宇宙や地球の形成を、聖書によってではなく、粒子論的・機械論的な理論で説明した。そこではそれまでに続いてきた「閉じた宇宙」を否定して宇宙を「無際限」とし、また、アリストテレスのいう天上界の第五元素「エーテル」を否定して、宇宙も月下界と同じ物質から成ることが主張されている。天上界が神的存在の居住地であることや、諸天体が司る道徳や、その地上への影響力も否定される。(『科学vs.キリスト教 世界史の転換』岡崎勝世)
「東洋の宗教や哲学はすべて、宇宙はエネルギーだという考えに基づいています。それが現代の量子物理学によって裏づけられたってわけですよ。それに東洋では、宇宙において人間の心は基本的にひとつだと信じられています。これは、ユングの集合的無意識を想起せずにはいられません。
 仏教徒は、万物は永遠ではないと信じています。ブッダは、この世界の苦しみはすべて、人間がひとつの考えやモノに執着することから生まれると説きました。人はあらゆる執着を捨て、宇宙は流れ、動き、変化するものだという真理をうけいれるべきだとね。仏教の視点からすると、時空とは意識の状態の反映でしかありません。仏教徒は対象をモノとしてではなく、つねに変化していく宇宙の動きと結びついた動態過程とみなしています。彼らは物質をエネルギーとしてとらえているんですよ。量子物理学と同様にね」
(『数学的にありえない』アダム・ファウアー:矢口誠訳)
 ニュートンによれば、万有引力に支配されている宇宙は無限である。もし有限なら中心が存在し、すべての物体は重力によってそちらに引き寄せられ、巨大なかたまりを形成するだろう。だがそれは観測結果と合わない。ニュートンの宇宙は時計じかけの機械に似ていた。決定論的なのだ。すべては厳密な数学的法則に支配されている。人間界の出来事は神の介入を必要としない。神は宇宙の「ぜんまい」を巻いたあとは、遠くからその成り行きを見守っていさえすればよいのだ。(『宇宙の起源』チン・ズアン・トゥアン:南条郁子訳)
 時間の矢の存在を物理学的に説明しよとすると、ぜんぜん自明のことではない。19世紀のボルツマン以来多くの学者がその答を求めてきた。本書では時間の矢の存在が宇宙論と深く関わっていることを示す。そして時間の矢が宇宙の初期条件によって規定されることを主張する。こういった立場を「時間の矢の宇宙論学派」とよぶ。(『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史)

時間論
 宇宙は進化のサイクルを繰り返す。その各サイクルにおいて、ビッグバンが高温の物質と放射を生み出し、それが膨張冷却して今日見られる銀河や恒星が形成される。その後、宇宙の膨張が加速して物質は散り散りになり、空間はほぼ完全な真空へと近づく。そして1兆年ほど経った頃、新たなビッグバンが起こって再びサイクルが始まる。宇宙の大規模構造を作り出した出来事は、一つ前のサイクル、つまり一番最近のビッグバン以前に起こったことになる。(『サイクリック宇宙論 ビッグバン・モデルを超える究極の理論』ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック:水谷淳訳)
 今日の【国策新聞】にのっている記事を、一語一語そのまま書き写しておく。

「120日後に宇宙船《インテグラル》の建造が完成する予定である。最初の《インテグラル》が宇宙空間へ高高と飛翔(ひしょう)する偉大なる歴史的時間はせまっている。今を去る1,000年前、諸君らの英雄的な先祖は全地球を征服して【単一国】の権力下においた。さらにより光栄ある偉業が諸君の眼前にある。ガラスと電気の、火を吐く《インテグラル》によって、宇宙の無限の方程式がすべて積分(インテグレート)されるのである。他の惑星に住んでいる未知の生物は、おそらくまだ【自由】という野蛮な状態にとどまっていようが、諸君は理性の恵み深い【くびき】に彼らを従わせねばならない。数学的に正確な幸福をわれらがもたらすことを彼らが理解できぬとしたら、われらの義務は彼らを強制的に幸福にすることである。しかしながら、武力に訴える前に、われらは言葉の威力をためしてみよう。
【恩人】の名において、【単一国】の全員数構成員(ナンバー)に布告する――
 自ら能力ありと自負するものは、すべて、【単一国】の美と偉大さに関する論文、ポエム、宣言(マニフェスト)、頌詩(オード)、その他の作品を作成せねばならぬ。
 これは《インテグラル》が運搬する最初の積荷となる。
【単一国】万歳! 員数成員万歳! 【恩人】万歳!」

(『われら』ザミャーチン:川端香男里訳)

ディストピア
「初めにビットありき」と私は話を切り出した。(中略)「事物、すなわち“It”は、情報、すなわち“ビット”から生まれます」(『宇宙をプログラムする宇宙 いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』セス・ロイド:水谷淳訳)
 本書の目的は、ごく簡単なことだ。今日の科学は、「なぜ何もないのではなく何かがあるのか」という問題に、さまざまな角度から取り組めるようになっているし、現に取り組みが進んでいるということを知ってほしいのである。そうして得られた答えはどれも――それらは驚くばかりに美しい実験で観察され、現代物理学の屋台骨というべき理論から導かれたものだ――何もないところから何かが生じてもかまわないということをほのめかしている。かまわないどころか、宇宙が誕生するためには、何もないところから何かが生まれる必要がありそうなのだ。さらには、得られている限りの証拠から考えて、この宇宙はまさしく、そうやって生じた【らしい】のである。(『宇宙が始まる前には何があったのか?』ローレンス・クラウス:青木薫訳)
『リグ・ヴェーダ』に含まれる10点近い宇宙創造に関する讃歌(紀元前10-9世紀の成立)のうち、「宇宙開闢(かいびゃく)の歌」(10・129)は次のようにうたう。

一、そのとき(宇宙始原のとき)無もなく、有もなかった。空界もなく、その上の天もなかった。(中略)深く測ることのできない水は存在していたのか。
二、その時、死も不死もなかった。夜と昼のしるしもなかった。かの唯一物は自力によって風なく呼吸していた。これより他の何も存在しなかった。
三、始原の時、暗黒は暗黒におおわれた、この一切はしるしのない水波だった。空虚におおわれて現れつつあるもの、かの唯一物は、熱の力によって生まれ出た。
四、最初にかの唯一物に意欲が現われた。これは思考の第一の種子だった。詩人たちは心に探し求めて、有の始原を無に見つけた。(以下略)

(『はじめてのインド哲学』立川武蔵)

哲学
 私たちは宇宙に住んでいる。「宇」は空間を意味し、「宙」は時間を意味する。(『暗黒宇宙の謎 宇宙をあやつる暗黒の正体とは』谷口義明)
 実は、こうした宇宙こそ、2500年前に釈迦(しゃか)がいった、唯識(ゆいしき)の世界なのです。
「宇宙はすべて意識で存在している」。つまり、情報状態だとすでにいっていたのです。(『苫米地英人、宇宙を語る』苫米地英人)
 ではブラック・ホールとは何だろう。それは重力源としての質量はあるのに、大きさが無限小のものである。質量の値はいくらでもよいが、ここで登場しているのは地球の1000万分の1ぐらいの重さのものである。これは小さいので地面に落下してもスルスルと地球を貫通し、北大西洋上のある地点に出て再び空に飛んでいってしまったので落下物が残っていないのだというわけである。(『相対論的宇宙論 ブラックホール・宇宙・超宇宙』佐藤文隆、松田卓也)
 宇宙の背後にあるこの精神的な存在を私が信ずるということは、一つの信仰です。この精神的な存在があるということの証明は、私にはできません。それが万能だとは思いませんし、それが宇宙をつくったのだということ、あるいは、この宇宙を動かし続けているのは、この精神的な存在だということもわかりません。私は、ただ人間性の精神的な側面で私が直接経験したことから、その存在を感じとるのです。(『未来を生きる トインビーとの対話』アーノルド・J・トインビー、若泉敬)
 これはまた、神についての書物でもある――ひょっとすると、神の不在についての本かもしれないが。いたるところに神ということばが現われる。宇宙を創造するとき、神にはどんな選択の幅があったのか、というアインシュタインの有名な問いに答えるべく、ホーキングは探究の旅に出た。彼自身、明確に述べているように、彼は神の心を理解しようとくわだてたのである。この努力から導かれた結論は少なくともこれまでのところ、まったく予想外のものだった――空間的に果てがなく、時間的にはじまりも終わりもなく、創造主の出番のない宇宙。(「序」カール・セーガン)『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング:林一訳
 137億年前の宇宙がプラズマ状態にあったということは、いわば分厚い雲が宇宙を包んでいるようなものですから、その先の様子は光をキャッチする通常の望遠鏡では見ることができないのです。
 ただし、それが「見える」ようになる可能性がないわけではありません。その手段が、重力波です。光は「プラズマの雲」に邪魔されてしまいますが、重力波は伝わります。
(『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司)
 ウィーラーの「真のビッグ・クエスチョン」は、まさに抽象的な性質のものであり、また車のバンパーに貼るステッカーに記せるほど簡潔なものだが、運転中にそれに思いを巡らせるのはお勧めできない。その中の五つは、特に際だっている。

いかにして存在したか?
なぜ量子か?
参加型の宇宙か?
何が意味を与えたか?
ITはBITからなるか?

(『量子が変える情報の宇宙』ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー:水谷淳訳)

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