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 ホーキングの物理学の中心には、常に時間と空間の概念が存在する。アインシュタイン以降の物理学では、3つの拡がりをもつ空間と(過去~未来という)一直線の拡がりしかもたない時間をあわせて「時空」と呼ぶことが多い。
 これは、単に時間と空間を一緒にした略語ではなく、その背後には、
「そもそも時間と空間という概念は独立したものではなく、物理的に混じることがある」
 という相対性理論独特の考え方がある。
(『ホーキング 虚時間の宇宙 宇宙の特異点をめぐって』竹内薫)
 そう考えるならば、東京には100年前の建物がほとんどないからといって、この都市はすでに過去の顔を失な(ママ)いアイデンティティを喪失したとあきらめるのは、早計に過ぎるということになる。むしろ東京では、変化に富む立地条件と、その上に江戸以来つくられた都市の構造とが歴史的、伝統的な空間の骨格を根底において形づくっているのであり、それと都市の中身を構成する新旧織り混ぜた種々な要素とが巧みに混淆し、世界にも類例のないユニークな都市空間を生み出しているといえるのである。(『東京の空間人類学』陣内秀信)
 綱(つな)
 よごすまじく首拭く
 寒の水

   和之(31歳)

(『異空間の俳句たち 死刑囚いのちの三行詩』異空間の俳句たち編集委員会)

詩歌
 その大きな重要な点しかもはなはだしばしば論議されている疑問とは次のことです。
 生きている生物体の空間的境界の内部で起こる時間・空間的事象は、物理学と化学とにおいてどのように説明されるか?
(『生命とは何か 物理的にみた生細胞』シュレーディンガー:岡小天、鎮目恭夫訳)
 電話は、元来、非常にプライベートなものだ。というよりも、我々のような狭っ苦しい土地に群れ集まって暮らしている人間たちにとっては、プライバシーと呼べるようなものは、せいぜいが寝室と便所と電話のまわりの少しばかりの空間の中にしか存在していないのだ。
 だから、我々は、「他人の電話に聞き耳を立ててはならない」という暗黙の了解事項を、必死になって守っている。ベッドサイドに置いてある電話であれ、オフィスの机の上の電話であれ、我々は、誰かが電話に向かって話をしている時には、その人間のことをなるべく無視しようと努めるのだ。
 たとえば、妹が階段の下にある電話で長電話をしている時、私は、なるべく階段に近付かないようにする。どうしても階段を通らなければならなくなったら、「もうすぐそっちを通るぞ」という感じの足音を立てながら、駆け抜けるようにして階段を降り切る。
 もちろん、私とて、妹がどんな男とどんな話をしているのかについて、興味がないわけではない。が、私は、市民社会に生きる人間として、その興味を押し殺す。
「ここで盗み聞きなんかをしたら、オレは最低のクズ野郎になってしまう」
 と、そう思って、私は一目散に階段を駆け下りてトイレに駆け込むのだ。
 ともかく、そうやって、我々は、「電話のプライバシー」を守るべく、日夜努力している。だからこそ、我々は、面と向かってはとても言えない恥ずかしいセリフを、受話器に向かってならば、なんとか吐くことができるのであり、そうであるからこそ、恋は生まれ、人々は生きているのである。
 ところが、携帯電話は、その我々の電話プライバシー死守の努力を、いともあっさりと踏みにじる。病院の待合室、駅のプラットホーム、公園のベンチ……そういう、こっちがわざわざ聞き耳を立てるまでもなく、すべての会話が丸聞こえに聞こえてしまう公共の空間に、携帯電話は、唐突に、ぶらりと、土足のままで入り込んでくる。そして、その携帯電話の持ち主は、臆面もなくプライベート通話を始め、周囲の人間たちのパブリックなモラリティーに泥を塗るのである。
(『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆)
 そこに不思議の場所がある。
 眼を閉じておのれの内部を凝視すると、そこに淡い灰色の空間がひろがっているのを感ずるが、その空間の背後に、不思議な場所があるように思われるのである。不用意にそこに近づいてそれを見ようとすると、その場所は急ぎ足に遠ざかってしまう。しかし、おのれを忘れ、その場所の存在をも忘れていると、それが意外に近いところにやってきて何事かを告げる。そういう不思議の場所が、すべてのひとの魂の内部から、身体の境をこえて外部に、どこまでもひろがっているように思われるのである。
(『カミの人類学 不思議の場所をめぐって』岩田慶治)
 われわれの空間の三次元性は内耳のなかにある感覚器官――いわゆる三半規管で、その位置はほぼ作用空間の三平面に対応する――に由来するとしたのはツィーオンであるが、これは彼の偉大な功績である。(『生物から見た世界』ユクスキュル、クリサート:日高敏隆、羽田節子訳)
『安全神話崩壊のパラドックス 治安の法社会学』でも書きましたが、昔は生活空間の中で「危ない地域」と「危なくない地域」が明確に分かれていました。「危ない地域」がいくらあっても自分が行かなければ怖くなかった。そもそも「治安が悪い」というのは警察の手が届かない地域がどれだけあるかということです。日本はそうした地域が少なかったから非常に治安はよかったのですが、むろん、警察の手の届かない場所があってもそんな場所へ行かなければ一般人には関係がないわけです。
 それでは犯罪が減少傾向にある中で、なぜ体感不安を感じるようになったのか? それは「危ない地域」と「危なくない地域」、すなわち、繁華街と住宅街、昼と夜といった境界がなくなったからだと思います。たとえば、最近話題になっているコンビニエンスストアの終夜営業規制、これは非常に大きいのです。治安のためにはむしろコンビニエンスストアは開いていたほうがいいという意見がありますが、夜に外を出歩く人が減れば治安は格段によくなります。治安をよくするための最強の手段は夜間外出禁止令であることを思い出してほしい。警察の取締りが、格段に楽になります。夜歩いている人は、皆不審人物ですから。(河合幹雄)
(『アキバ通り魔事件をどう読むか!?』洋泉社ムック編集部編)
 今日の【国策新聞】にのっている記事を、一語一語そのまま書き写しておく。

「120日後に宇宙船《インテグラル》の建造が完成する予定である。最初の《インテグラル》が宇宙空間へ高高と飛翔(ひしょう)する偉大なる歴史的時間はせまっている。今を去る1,000年前、諸君らの英雄的な先祖は全地球を征服して【単一国】の権力下においた。さらにより光栄ある偉業が諸君の眼前にある。ガラスと電気の、火を吐く《インテグラル》によって、宇宙の無限の方程式がすべて積分(インテグレート)されるのである。他の惑星に住んでいる未知の生物は、おそらくまだ【自由】という野蛮な状態にとどまっていようが、諸君は理性の恵み深い【くびき】に彼らを従わせねばならない。数学的に正確な幸福をわれらがもたらすことを彼らが理解できぬとしたら、われらの義務は彼らを強制的に幸福にすることである。しかしながら、武力に訴える前に、われらは言葉の威力をためしてみよう。
【恩人】の名において、【単一国】の全員数構成員(ナンバー)に布告する――
 自ら能力ありと自負するものは、すべて、【単一国】の美と偉大さに関する論文、ポエム、宣言(マニフェスト)、頌詩(オード)、その他の作品を作成せねばならぬ。
 これは《インテグラル》が運搬する最初の積荷となる。
【単一国】万歳! 員数成員万歳! 【恩人】万歳!」

(『われら』ザミャーチン:川端香男里訳)

ディストピア
 歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、それも一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で、把握し、解釈し、理解し、説明し、叙述する営みのことである。(『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』岡田英弘)
 結界という考え方は、案外さまざまな場所にその痕跡(こんせき)を認めることができる。
 たとえば、和風建築を思い浮かべていただきたい。
 居住空間は襖(ふすま)や障子(しょうじ)で仕切られ、住宅と庭は縁側で仕切られている。いずれも非常に柔らかい印象をかもす住まいの設(しつら)えだが、じつは意図は意匠にあるのではない。それが存在することで、住人も、そこを訪れる人も、なんとなく心を改め居住まいを正す。襖、障子、縁側の本来の目的は、そういうところにある。
(『世界同時超暴落 大底からのサバイバル投資術』伊東秀廣)

投資
 一人の絵描きとして、いつも私は普通の兵隊とは別の空間に住んでいた。生命そのものが危機にさらされている瞬間にすら、美しいものを発見し、絵になるものを発見せずにはいられなかった。頭の中に画面を想像してはモチーフをそこにおさめるための構図を考えつづけていた。人の死に直面しているときでも、頭の中でそんな作業をくりかえしている自分に、絵描き根性のあさましさを感じて思わずぞっとするときもあった。しかし、この絵描き根性があったがゆえに、ほかの兵隊たちが完全な餓鬼道に陥っているようなときにも、一歩ひいたところに身を持していることができたのだろう。絵描きであったことは、私の特権であり、私の幸せであったと感謝している。(『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』立花隆)

シベリア抑留/強制収容所
 奥田(愛基)が一国の首相を「お前」と呼び、「安倍を倒せ!」と叫んでも、大人は諌(いさ)めるどころか、「そうだ!」と同調した。大人からして「安倍」と呼び捨てにしている。その中には子供連れの女性もいる。明らかに異常な空間であるが、その異常さも含め、大人は、あえて彼らに何も教えないのだろう。この若者たちがどんな道を歩もうが、今は安倍政権さえ、口汚く罵(ののし)ってくれさえすればいいのだから。(『日本共産党研究 絶対に誤りを認めない政党』産経新聞政治部)

日本共産党
 なぜ都市で、とくに時間が早くなるのか。もちろん、ハイテク化が進んで行くからである。それでは、ハイテク化とはなにか。コンピュータに代表されるように、それはまず第一に、情報化である。なぜ都市は、とくに大都市は、極端に情報化するのか。
 都市とはもともと、そのために生じたものなのである。都市には、予測不能なもの、ゆえに統御不能なものは、存在してはならない。それどころか、不測かつ統御不能という性質を持つものを排除した空間、そうしたものとして、そもそも都市が成立したのである。あたりまえのことだが、すべての予測は情報の上に成り立つ。一極集中がどこまでも進むことも、情報に関係している。入手が遅れた情報は、その価値を失う。それは、だれでも気づいていることであろう。
(『カミとヒトの解剖学』養老孟司)

科学と宗教
「ファイナルアンサー?」と、みのが迫る……カメラがぐぐっと寄る。約3秒間のアップ。画面いっぱいの、みの。驚異的な顔面圧力。窒息的な引っ張り。凄い。……現代の悪代官みたいだ。
 水道メーターの談合でも、この顔を使ったんだろうか? 最終入札価格を調整する時、みのは、「ファイナルプライス?」と、言ったのだろうか。  ……毎日、テレビをつけると、必ず、みのもんたが出ている。たぶん私は、親戚縁者の誰よりも頻繁にみのと会っている。いや、家族の誰よりも、かもしれない。
 いやだなあ。
 で、結局、私の書斎は、みの常駐型のテレビのおかげで、嫌いな上司が巡回しているオフィスみたいな感じの、容易にくつろげない空間になっているわけだが、どうだろう、ソニーあたりが、みの強制削除機能付きのテレビを開発したら、オレは買うぞ。10万までは出す。みの排除機能が付くなら、さらに5万円出す。どうだ?
(『テレビ標本箱』小田嶋隆)
 私たちは宇宙に住んでいる。「宇」は空間を意味し、「宙」は時間を意味する。(『暗黒宇宙の謎 宇宙をあやつる暗黒の正体とは』谷口義明)
 光の速さで空間を進むものには、時間に沿って動くための速さが残らない。したがって、光は年をとらない。ビッグバンで生じた光子は、今日でも当時と同じ年齢なのだ。光の速さでは時間は経過しないのである。(『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』ブライアン・グリーン:林一、林大訳)

宇宙
 少年はうす汚れていた。衣服は破れ、洗われておらず、そして彼の顔は攻撃的なほど鋭く、もの言いたげだった。誰も彼に笛の吹き方を教えなかったし、また誰もそうしようとはしなかった。彼は自分の力でそれを覚えたのである。そしてその映画音楽がころがり出たとき、その調べの純粋さは途方もないものだった。不思議にも、精神はその純粋さの上に浮かんだ。数歩進んでから、精神は木立を抜け、家々の上を通って海へと向かい続けた。その運動は、時間と空間の中にではなく、純粋さの中にあった。(『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 4』J・クリシュナムルティ:大野純一訳)
 記憶力に興味を持ち始めたごく初期の頃――カーベロの真似をしていた頃――にすでに私は、トランプの順番などのように関連のない情報の羅列を憶えるためには、情報をコード化してイメージに変換することが必要だとわかっていた。イメージに変換することで、ばらばらの情報をつなげることが可能になるのである。このプロセスでは想像力を駆使する。そして、論理や空間認知をはじめとする脳の機能を幅広く使うことになる。(『記憶に自信のなかった私が世界記憶力選手権で8回優勝した最強のテクニック』ドミニク・オブライエン:梶浦真美訳)
 位置が風景のなかの場所であるように、「できごと」は時空のなかにおける場所である。できごととは、ある場所において、ある時間において起こるものだ。それは空間のなかの位置であると同時に、時間のなかの位置である。このようなできごとの世界――われわれが時空と呼ぶ世界――が四次元的であるのは明らかだろう。できごとの「どこ」を指定する三つの座標をもち、「いつ」を指定するための一つの座標をもっているからだ。(『時空の歩き方 時間論・宇宙論の最前線』スティーヴン・ホーキング、キップ・ソーン、リチャード・プライス、イーゴリ・ノヴィコフ、ティモシー・フェリス、アラン・ライトマン:林大訳)