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 なぜ過食するのか。なぜ拒食するのか。症状に関する書籍は数多く出版されているが、それらはいずれも「いかに治すか」という共通テーマのもとにつくられている。
 今回、べてるしあわせ研究所では、経験者10名(男性2名、女性8名)による「摂食障害研究班」を立ち上げ議論を重ねた。その結果浮かび上がってきたのが、「どうしたら摂食障害になれるか」という観点であった。
 いままで、「いかに治すか」に腐心しながらも結果として食べ吐きに走り、罪悪感に苛まれてきた経験者たちにとって、「どうしたらなれるか」という観点は大いに受け、議論も盛り上がった。
(『べてるの家の「当事者研究」』浦河べてるの家)
 なにか仕事はないものか、倒れたり入院したりする仲間でもできることはないだろうか。メンバーは向谷地(むかいやち)さんとともに、道内の各所にある精神障害者の作業所も見学にいった。そこでさまざまなことを学んだが、帰るとまた延々と話しあいをくり返すばかりだった。そうした話のどこで、いつ、だれがいい出したのだろうか。ひとつのアイデアがミーティングに集う人びとのこころのなかに輝きはじめていた。
「どうだ、商売しないか」
 内職ではなく、自分たちで昆布を仕入れ、売ってみよう。
「そうだ、金もうけするべ!」
 このひとことが、みんなの心を捉えていった。精神障害者であろうがなかろうが、金もうけと聞いて浮き立たないものはいない。人にいわれてするのではなく、内職なんかではなく、自分たちで働いて売って金もうけに挑戦してみよう。
(『悩む力 べてるの家の人びと』斉藤道雄)
 立ちのぼる煙の記憶のもとで、少年はひとりつぶやくのだった。
「お父さん、お母さん、みんな、心配しないでください」
 煙になった家族に、そして生き残った自分に、少年は語りかけている。
「ぼくは幸福になったりしませんから。けっしてしあわせになることはありませんから」
 ホロコーストを生きのびた少年は、自分だけは幸福になる、とはいわなかった。しあわせにならないといったのである。そうすることで、失われたものの記憶を自らの生につなぎとめたのだった。
(『治りませんように べてるの家のいま』斉藤道雄)
 しかし向谷地はこうした絶望的な状況そのものよりも、当事者たちが人としてのあたりまえの苦労を奪われた人々であることに問題を感じ取る。精神科医療の管理のもとで、精神障害者たちは悩むことや苦労することそのものが奪われていた。(『当事者研究の研究』石原孝二編)

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