私は、ようやく潔白の身となった。私と家族にとって松本サリン事件が起きてからの1年間は、短いようでやはり長いものだった。あの夜、突然、平穏な生活が破られ、妻が意識不明の重体となり、私は犯人扱いされ、どん底の苦しみを味わった。おそらく、この体験はどんなにことばを尽くしても人にはわかってもらえないだろう。私も、これまでは世にある冤罪はひと事だと思っていた。今は、条件さえそろえば、いつでも無実の罪が着せられるものだということが生身でわかる。(『「疑惑」は晴れようとも 松本サリン事件の犯人とされた私』河野義行)

報道被害
 人は疲れや痛みを感じると、中枢神経が指令を出して筋肉を緊張させる仕組みになっています。そうするとますます、血液の循環は悪くなり、筋肉中には乳酸や老廃物が蓄積。痛みや不快感を引き起こしてしまいます。こうした症状から抜け出すためにも、筋肉をストレッチし、血液を滞りなく巡らせることが大切です。(『体を芯からやわらげる 健康ストレッチ』森俊憲、森和世)
 カラダが硬く、関節の可動域が狭い人は、全身の動きにさまざまな制限がかかり、日常生活やスポーツ時の動作をスムーズに行うことが難しくなります。日常生活動作で例をあげると、背中や股関節の可動域が狭い人は、かがんだり歩いたりといった基本的な動きにも支障が出てきます。(『体が硬い人のためのストレッチ石井直方監修、荒川裕志)

ストレッチ
 じつは、発声学習できる動物には「息を止めることができる」という共通点があります。「そんなの、犬やネコだってできるだろう?」と思うかもしれませんが、イヌもネコも息を止めることはできません。あるいはサルもウシもシカも、発声学習しない動物はみな、自分の意思で息を止めることができないのです。一方、発声学習できるオウムや九官鳥、イルカ、クジラ、ヒトなどは、自分の意思で自由に息を止めたり吸ったりできます。(『言葉はなぜ生まれたのか』岡ノ谷一夫、石森愛彦・絵)
 本来、書とは「かく」。したがって、鑿(のみ)で「掻く」もしくは「欠く」「画く」ものでした。その「刻(ほ)る」姿を、筆で「書く」ことの中に写し込むことによって本格的な毛筆の書が生まれたという経緯が中国書史にはありました。ところが、そうした「刻」から「書」が生まれた深みを、日本の書史は最初から見失っているのです。ちなみに現行の日本銀行券の文字がすべて隷書体で記されているのは、明治維新以降の近代になってようやく中国の「刻る書」を本格的に学習、導入したことに由来します。(『説き語り日本書史石川九楊
 四つ葉のクローバーが生じる原因はいくつかありますが、一つには、葉ができあがるときに踏まれたりして傷つけられると、奇形になって四つ葉になるのです。そのため、四つ葉のクローバーは、道ばたや運動場などでよく見つかります。
 幸せのシンボルが、道ばたにあるというのも意外ですが、本当の幸せは踏まれながら育つものであることを、四つ葉のクローバーは教えてくれているのかもしれません。
(『なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか 仏教と植物の切っても切れない66の関係』稲垣栄洋)
「おらあたった今夢から覚めたんだ。今までおらあ盗みをしてきた、半分は欲だ、半分は自棄(やけ)だ、また堅気のけちな米喰虫でつまらなく終るより、いっそ鼠小僧のような大盗人になって、わっと世間から騒がれて死にてえ……そんな見栄(みえ)も手伝っていた。だがおらあ、今夜という今夜こそ、自分の仕事がどんなに酷(むご)いものかってえことを知った。盗むこっちゃあどうせ酒か博奕(ばくち)に遣っちまう金が、あそこじゃ親娘三人を生かすか殺すかの楔(くさび)になっている。こんな、酷え業たあ知らなかった」(『雨の山吹山本周五郎
「けれどもどこかにほんとうに良い仕事をする人間はいるんだ、いつの世にも、どこかにそういう人間がいて、見えないところで、世の中の楔(くさび)になっている」(『柳橋物語・むかしも今も山本周五郎
 ところが小網代(こあじろ)の森は、真ん中を流れる川の最上流部から河口の干潟まで、1軒の家も工場もなければ、自動車が通るような道路もありません。たった70haしかありませんが、流域という地形がまるごと自然のままで残されているのです。(『「奇跡の自然」の守りかた 三浦半島・小網代の谷から岸由二、柳瀬博一)
 人間行動遺伝学は、決して宿命論に結び付く学問でもなければ、人々を差別するための学問でもない。むしろ遺伝によって一人一人がいかに豊かな内的資源を与えられているのか、そして一人一人がこの自然の中でいかに特別な存在であるのかを解き明かしてくれる学問である。(『心はどのように遺伝するか 双生児が語る新しい遺伝観』安藤寿康)
「事業仕分け」に参加して驚いたことが二つある。
 一つは、独立行政法人(独法)の金満ぶりである。独法とは国費で運営される国の外郭団体で、官僚の天下り先となっている。(中略)
 緒方貞子氏が理事長をつとめるJICA(国際協力機構)の事業規模は年間約1兆円。草の根交流のイメージに似合わず、職員の待遇は外交官並みに優雅である。本部ビルは東京・麹町にあり家賃が年間28億円、社員食堂に寿司屋台が出る。'08年に緒方理事長の肝いりで市谷に新設された研究所では、1年間、国際的な学術誌に論文を1本も出していない、つまり実績がないと言う。現場を見に行くと、ホテルのようなつくりで1階はロビーとなっており、フロントマンが恭しく控えている。2階に上がると30畳ほどの座敷があり、座卓の上にビールのコップとおしぼりが並んでいた。高そうなインテリアでまとめた研究員室もあるのだが、研究所というよりは保養所のようであった。
(『裏切りの民主党』若林亜紀)

響堂雪乃紺谷典子
 アメリカの母親が、幼稚園や保育園に子どもを引き取りに来たときにわが子に問うことは「みんなと一緒に遊んだか」である。人さまと getting along できる人間にならないと、これからの人生で往生するという思いがあるからである。アメリカはそういう文化である。
 一方、日本の母親は「先生のいいつけをよく守ったか。お利口さんであったか」をまずきく。やはり日本はタテの人間関係を大切にする文化である。
(『チームワークの心理学國分康孝
「そのためには枝葉末節にとらわれないで、本質を見ることだ。文字や形の奥の方には本当の哲理のようなものがある、表層の文字や形を覚えないで、その奥にある深層の本質を見ることだ。世の中には似たようなものがあるが、みんなどこかが違うのだ。形だけを見ていると、これがみんな同じに見えてしまう。それだけ覚えていたら大丈夫、ものを考える力ができる」
 土肥原将軍の戦術講義は実に平易な話であったが、噛めば噛むほど味の出る奥深いものがあって、堀には一生忘れられない言葉であった。
(『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』堀栄三)

戦争日本近代史
養老●その点、僕が注目するのは北海道です。中標津(なかしべつ)へ行ったら似たようなことをやっていましてね、町長が家屋をできるだけ街に集めてくるというプランを建てていました。公共投資を考えると、家を僻地(へきち)に造ったら無駄だからです。いまの日本は一種悪平等で、僻地にも、ガス、水道、道路を惹かなければならない。だったら、住民は街に集まってくれたほうがいい。そこから畑に出ていけばいいわけで、そうすれば集中のメリットが生じます。(『本質を見抜く力 環境・食料・エネルギー養老孟司竹村公太郎
 自ら答えを突き止めることのない人というのは、こういうものです。【思い込みで判断する人間は、誰かに別の思い込みを吹き込まれることで、じつに簡単に操作されてしまいます。】(『日本人だけが知らない戦争論苫米地英人
 家康が克服すべき強大な敵、戦うべき新たな敵、それは利根川であった。その敵を征服すれば、他大名を圧倒する富を獲得し、天下は自動的に転がり込んでくる、と家康は看破した。(『日本史の謎は「地形」で解ける竹村公太郎
 なお、イギリス人とオランダ人にどれほど恨まれているかについて、日本人はまったく無自覚だ。日本はアメリカにこそ敗北したが、その過程でオランダを踏み潰し、大英帝国と刺し違えているのである。
 日本と戦ったがゆえに、オランダもイギリスもその版図を失ったのだ。しかも戦闘においては、日本に対して完敗の連続である。日本は英蘭に対しては戦勝国である意識が欠落しているのだから、敗者の怨念に無自覚なのは当然である。
(『歴史問題は解決しない 日本がこれからも敗戦国でありつづける理由』倉山満)
 都市というのは実は人間が考えたものしか置かないという約束のあるところなんです。ですから、都市は今、一番極端には、地面すら自然にあったものは気に入らないんで、泥があると気に入らないから、徹底的に舗装(ほそう)しちゃうんですね。(『脳と自然と日本養老孟司
 瞑想をつづけていると、あるときから力まずに精神集中ができるようになる。リラックスしながらも心をとぎすまし、すこし離れたところから自分を観察できるようになる。それまでは四苦八苦していたのに、しだいに瞑想にのめり込んでゆく。もう施設の不備など気にならない。規則はかえっていい味方であることがわかる。あっという間に時間が流れてゆく。心は夜明けの山奥の湖のように静まりかえり、周囲の景色をあますところなく映す鏡のようになる。近づいて湖をのぞき込むと、深い底まで見える。ここまで心が澄んでくると、一瞬一瞬がじつにたしかなものになり、美しく、やすらいで感じられる。(『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門 豊かな人生の技法』ウィリアム・ハート:日本ヴィパッサナー協会監修、太田陽太郎訳)

ヴィパッサナー
 137億年前の宇宙がプラズマ状態にあったということは、いわば分厚い雲が宇宙を包んでいるようなものですから、その先の様子は光をキャッチする通常の望遠鏡では見ることができないのです。
 ただし、それが「見える」ようになる可能性がないわけではありません。その手段が、重力波です。光は「プラズマの雲」に邪魔されてしまいますが、重力波は伝わります。
(『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司)
 時間の矢の存在を物理学的に説明しよとすると、ぜんぜん自明のことではない。19世紀のボルツマン以来多くの学者がその答を求めてきた。本書では時間の矢の存在が宇宙論と深く関わっていることを示す。そして時間の矢が宇宙の初期条件によって規定されることを主張する。こういった立場を「時間の矢の宇宙論学派」とよぶ。(『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密松田卓也二間瀬敏史

時間論
 犬は報酬なしで芸を繰り返し行なうが、別の犬が同じ芸でソーセージ片をもらうのを目にした途端、もうやるのを拒否する。(『道徳性の起源 ボノボが教えてくれることフランス・ドゥ・ヴァール:柴田裕之訳)
 この日のわたしはただ無心で、ひたすら前だけを見て走ると決めていたのだが、そんなに簡単にすむことではなかった。走りながら、沿道の人々の中に、知っている顔はないか、一緒にこのあたりで悩みを語り合った人はいないか、と探していた。しかし、誰もいなかった。彼女たちだってもう40歳前後だ。家事や仕事に追われているかもしれない。とうにこの街を去って、どこかで日々の暮らしを営んでいるだろう。そんなことを考えながら、彼女たちのひとりひとりに謝罪していた。
 はからずも24時間マラソンは、懺悔(ざんげ)と謝罪のマラソンになったのである。しかし、それは走ってみて初めてわかったことであり、走る前は、何度もいうように無心で走ることしか念頭になかった。
(『杉田』杉田かおる)

創価学会
 笑いの波が聴衆から起こる。「一緒に笑えるのはよいことです」と彼は話し出した。「冗談に対しても――私たち自身に対しても、笑うのはとてもよいことだ。私たちの心には涙が多すぎる。みじめさが多すぎます」(『キッチン日記 J・クリシュナムルティとの1001回のランチマイケル・クローネン:高橋重敏訳)

クリシュナムルティ
 ゾルゲの墓は東京都府中市の多磨霊園にあり、ロシアの駐在武官や情報機関員が定期的に訪れる。先人の霊を慰めるとともに任務の成功を誓うのだという。ソ連の駐日大使も日本へ赴任した際はゾルゲの墓を訪れる慣行もあった。ソ連崩壊後は、ロシア駐日大使に引き継がれている。(『私を通りすぎたスパイたち佐々淳行
 有名なエピソードがある。1936年(昭和11年)の二・二六事件のときだ。神奈川県湯河原町の別荘として借りていた伊藤旅館の別棟にいた牧野伸顕のところに、早朝、反乱軍がなだれ込んできた。反乱軍から逃れ、庭続きの裏山に脱出しようとした彼が、銃殺されそうになったとき、和子さんは祖父を救うためにハンカチを広げて銃口の前に立ちはだかったという。
 彼女は聖心女子学院の出身だが、在学中に週刊誌主催のミス日本に選ばれたくらいの美人である。反乱軍兵士は、銃口の前に飛び出して祖父をかばった美女にさぞ驚いたに違いない。孫娘の気迫に気圧(けお)されて、牧野伸顕は命拾いしたといわれている。
(『私を通りすぎたマドンナたち佐々淳行
 大衆に異を唱える!
 これは「知的」と思われがちなんだね
 こういうエセインテリ志向を「オウム的!」というわけだ
 わかったかしょくん
(『オウム的!小林よしのり竹内義和
 ただ、左右いずれであれ、実証的な研究を顧(かえり)みず、みずからの思い込みにもとづいて煽動(せんどう)的な議論を重ねる人々とは、対話と議論が成り立たない。その意味で、「慰安婦」問題について実証的基礎もないまま元「慰安婦」を売女呼ばわりする「論客」は、まともな議論の対象にならない。本書で「慰安婦=公娼」論への言及と反論がすくないのは、それをよしとしているからではなく、およそ学問的論議の対象にならないと考えているためである。(『「慰安婦」問題とは何だったのか メディア・NGO・政府の功罪』大沼保昭)
 ストレスの多い現代人は、交感神経が優位になりがちです。
 そこで、意識してゆっくりと長く息を吐く、長生き呼吸を行うとどうなるでしょうか。横隔膜を介して副交感神経が刺激を受けることで、自律神経のバランスが整うのです。
(『自律神経を整える「長生き呼吸」 なぜ呼吸を変えると病気が治るのか?』坂田隆夫)
 センサーがうまく機能しないと、自分の身体が「ブレる」ことになり、身体が「ブレる」から常に緊張を強(し)いられて疲れてしまうのです。
「ブレる」のは身体だけではありません。きょろきょろしているときは、気持ちも落ち着きません。
【センサーがうまく働かないと、身体だけでなく心までもがブレて不安になり、何もしていなくても疲れきってしまうのです。】
(『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖)

呼吸
 智慧とは物事をありのままに知ることです。まず、六根にデータが入りますね。眼耳鼻舌身意に情報が触れます。その情報を瞬時に主観で合成して概念になる前に、そのデータを明確に観察すると、データというものは常に流れて消えていくものだと発見できるのです。(『バカの理由(わけ) 役立つ初期仏教法話12アルボムッレ・スマナサーラ
 しかし、われわれはかんたんに「じゃまだから」という理由で他の生命の命を奪います。実は殺意が起こる瞬間、自分のこころに自分の命を害するエネルギーが生まれます。誰かに裁かれなくても、殺生をすると自分のこころに自分を破壊するエネルギーが蓄積されるのです。
 かんたんにいえば、他殺は自殺行為です。そのように、自分のしたことは、かならず結果となって自分に返ってきます。他の生命が活躍する場を奪ったら、その分だけ自分の生命が活躍する場はなくなります。ですから、すべての生命を慈しむ気持ちを育てて、互いに尊重し合うことが大事だと仏教では説きます。
(『的中する生き方 役立つ初期仏教法話10アルボムッレ・スマナサーラ
 住宅手当を年間60万円払うのも、会社が借り上げをして年間60万円負担するのも、会社の負担額は変わりません。でも、社員のふところは全然違ってくるのです。会社が社員のことを考えてちょっと工夫をすれば、社員の手取り額は大きく変わってくるわけです。
 外資系企業は、従業員と契約する際に、このような形で社員の手取りを増やすことは多々あります。もし、あなたの会社に借り上げ制度があるのなら使わない手はないです。
(『知らないと損する給与明細大村大次郎
 私は手当たり次第、戦友の骨を集め、【だび】に付しながら、とめどなく流れてくる涙をふせぎようもなかった。戦後の21年間、祖国の私たちは彼らのために何をしてきたのか。平和になれて、その礎(いしずえ)となった彼らを地獄さながら洞窟内に放置してきたではないか……。
 この小さな島でくりひろげられた戦闘は、事実、私の戦ったアンガウル島とならんで、その壮絶さは世界戦史上、はじめての例であるともいう。その恐怖は米軍戦史にも明らかであり、頑強な抵抗がようやく終わったのち、米軍は「これほど高価な代償を払ってまで、占領しなければならなかったのか」と述懐しているくらいである。
(『ペリリュー島玉砕戦 南海の小島七十日の血戦舩坂弘

ペリリュー島戦争日本近代史
 ところが、こういった気の毒な労働者に対して、マルクス以後の共産主義理論家・指導者は、「彼らは当面の狭い利益、明日の糧を得るというだけのために資本家や【反動層】に買収され、労働者階級全体を裏切る」として「信用を置くな」と唱え、彼らのことを【「ルンペン・プロレタリアート」】と呼びました。(『いますぐ読みたい 日本共産党の謎筆坂秀世監修、篠原常一郎)

日本共産党