ミュラーとシモンズは、「クオンツ」の名で知られる、一風変わった投資家たちの頂点にいた。クオンツは、頭がおかしくなりそうな数式やスーパーコンピュータを駆使して、何十億ドルもの金をあっという間に稼ぎ出す人種だった。(『ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち』スコット・パタースン:永峯涼訳)
 チャート45で見るが、(※アメリカの)短期金利が5%を切ったことはほとんどなく、10%近いことも少なくなかったし、数回は(国内が平和なとき)20%や25%まで上昇したこともある。これは当時のアメリカがいわゆる発展途上国だったからで、ヨーロッパから資金を取り入れるためにはリスクが高い分だけ超高金利でなければならなかった。(『チャートで見る株式市場200年の歴史』ケン・フィッシャー:長尾慎太郎監修、井田京子訳)
 今の時代はどうしてゆとりがないのかというと、先に起こるべき楽しみをどんどん手前に引き寄せて、それを使い果たしてしまうから、先に楽しみが持てないのです。そうすると、心にゆとりがなくなり、余裕がなくなってたえず焦る。そして、何か先に楽しみを探す。こういうふうになってしまうわけです。(『小さな実践の一歩から鍵山秀三郎
 ――役人のように、税で取った他人の金をばら撒くのではなく、身銭を切れということですね。

 そうです。役人だってできますよ。自分の給与から社会のためにお金を出すのです。還元先は、本当に社会的に弱い人で、必要な所に、身銭を切る。決して、名誉や見返りを求めないで使うのです。

 ――還元ですね。

 そうです。これは、「天に宝を積む」というのです。お金がそれで結果的に返ってくる。そうした還元の行為によって、発想が変わってきますから。

(『人たらしの流儀佐藤優
 宗教体験が純正であるかどうか。これは、一つには、その人の日常生活の中に見られる思想や行為から知るほかはない。神秘体験はあくまでも情動的で、その人の内面の精神の問題である。論理、知性の世界の出来事ではない。論証して正しさを証明するものではないのである。ただ、彼は自己のうちに絶対なる何ものかを見、否応なしに自分はそれと一なる存在であることを、今や、知っている。おのずと人格や生活行為の中に、それなりの宗教的自覚と境涯が表出されてくるのは当然なのであって、そこにこそ彼の宗教性の深さが験(ため)されることとなる。(『人類の知的遺産 53 ラーマクリシュナ』奈良康明)

ラーマクリシュナ
 脳の見方には、いろいろある。細胞生物学者なら、脳を神経細胞の集まりとして見るであろう。生理学者なら、膜電位の変化の集積と見るかもしれない。ここではそれを、まず情報系としてとらえてみよう。(『考えるヒト養老孟司
 母親にそうじを手伝えと言われて、うちの娘が言う。
「どうせまた汚れるんだから、そうじなんか、しなくてもいいじゃない」
 そういう人は、どうせ死ぬんだから、生きなくてもいい。そう言うのであろうか。どうせまたおなかがすくのだから、食べたって同じよ。そう思うのだろうか。
(『解剖学教室へようこそ養老孟司
「プロフェッショナルは、感情抜きでただその仕事をやるべきだ」ミカエル・リャブコ(『人はなぜ突然怒りだすのか?北川貴英

怒り
 ノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)といって、欧米では貴族や裕福な家に生まれた男は、社会のリーダーの義務として戦場に出るのが伝統だった。安全な後方から「突撃!」とけしかけるのではなく、「俺に続け!」と真っ先に切り込む者を「リーダー」と呼ぶ。だからアメリカの歴代大統領のほとんどが軍隊経験者である。たとえばケネディ大統領は太平洋戦争で魚雷艇に乗って戦い、兄は戦死している。
 ところが現在、アメリカ議会の上下院議員のうち軍隊経験者はわずか5%、自分の子供を軍隊に入れている議員はたった7人しかいない。デューク大学の調査によれば、大統領の閣僚や議員に軍隊経験者が少ない時ほどアメリカは戦争を起こしやすくなるという。自分や身内が兵士でないと、戦争の痛みはわからない。
(『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』町山智浩)
 これに対する私の答えは、チューリング以前の時代にも、実は生命が始まって以来ずっと、あらゆる生命形態の内部で、この世を支配する力は計算だったということだ。しかしその計算は非常に特殊な種類のものだった。この計算は、今のノートパソコンの能力と比べれば、ほとんどどの点でも負けている。それでも、ある一点、つまり適応に関しては、きわめて優れていた。こうした計算のことを、私はエコリズムと呼ぶ――つまり、その処理能力を自分が住み着いている環境からの学習によって導き、そこで有効な行動ができるようにするアルゴリズムである。(『生命を進化させる究極のアルゴリズム』レスリー・ヴァリアント:松浦俊輔訳)
 医学研究は進歩を遂げ、もはや健康な人々などほとんど残されていないまでになった。
  ――オルダス・ハクスリー
(『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス:大野裕監修、青木創訳)

精神疾患
 既成の秩序と建造物を破壊したのは項羽であるが、人の精神の風土にいぜんとして聳立(しょうりつ)している尊貴な血胤への尊崇とか人の自由の羈絆(きはん)となった儒教の礼を投擲(とうてき)しようとしたのは劉邦であろう。(『香乱記宮城谷昌光
 春秋時代の強国である(ご)の君主として覇(は)をとなえることになる闔廬(こうりょ)に、天才兵法家孫武孫子)が仕えるときに、
 ――将は軍に在(あ)りては、君命をも受けざる所有(あ)り。
 と述べた。
 将軍に任命されて軍を率いるようになってからは、たとえ君命に従わないことがある。すなわち戦場は千変万化の場であり、戦場をまのあたりにしていない君主の命令に従っていては、勝機をのがすばかりか、あずかっている兵を敗北によってそこなうことさえある。この思想は後世の軍事主導者にも享受(きょうじゅ)された。
(『香乱記宮城谷昌光
 大きな川は情報の伝達をさまたげる。(『香乱記宮城谷昌光
「苦難は人の真偽(しんぎ)をみぬかせてくれる」(『香乱記宮城谷昌光
 こうした解析の結果、標高が高いだけでは必ずしも脅威(きょうい)とならないが、そこに急な傾斜という要素が加わることで、地域の自殺率が高まるという可能性が示されたことになる。(『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』岡檀)
 ある点で、中世修道会のような規律と自己犠牲を強いる諜報活動という職業は、修道生活に酷似している。
  ――1976年、諜報活動に関する米国上院教会委員会報告
(『石の結社デイヴィッド・マレル:山本光伸訳)
 服従は、社会生活の構造において、とくに目立つ基本的要素である。ある程度の権威体系はあらゆる共同生活に必要なものであって、従わないにせよ従うにせよ、他人の命令に反応しなくてもすむのは、孤立した生活をしている人だけである。1933年から1945年までに、罪なき数百万の人たちが命令によって組織的に虐殺されたことが確認されている。ガス室が建てられ、死のキャンプを見張りが監視し、品物を製造するときと同じように能率的に、毎日の割当て数の死体が生産された。この非人間的な政策は一人の人間の頭から出たものかもしれないが、非常に多くの人たちが命令に従ったからこそ、大規模に施行することができたのである。(『服従の心理 アイヒマン実験スタンレー・ミルグラム岸田秀訳)
「べつの見方がある」
「そうかな?」
「あんたは失敗をしなかった。おれが成功したのだ」
(『悪党ロバート・B・パーカー:菊池光訳)
 チリの森を知らない者はこの惑星を知らない。
 あの奥地、あのぬかるみ、あの静寂から、私は、歩き回り世界のために歌を歌いに出て来たのだ。
(『ネルーダ回想録 わが生涯の告白』パブロ・ネルーダ:本川誠二訳)
 孤児はまず、生き残る方法を学ぶ。幼いうちから感情を隠すことを知り、心の痛みが耐えがたいほど募ったときには、頭のなかに洞穴を作り、そこに逃げ込む。(『ピルグリム』テリー・ヘイズ:山中朝晶訳)
 土曜日、お菓子を焼いてから、富田夫人と、芝の福沢(諭吉)氏のお宅にうかがった。人力車の乗り心地もよく、福沢家の皆さんがとても親切で礼儀正しいので、私はすっかりうれしくなった。福沢氏は2階に案内して、江戸湾のすばらしい眺めを見せてくださった。(『勝海舟の嫁クララの明治日記』クララ・ホイットニー:一又民子、高野フミ、岩原明子、小林ひろみ訳)

福澤諭吉勝海舟
 非日常的なものとして、カリスマ的支配は、合理的支配、ことに官僚制的支配にたいしても、また、伝統的支配、わけても家父長制的および家産性的あるいは身分制的支配にたいしても、きびしく対立する。(『権力と支配マックス・ウェーバー:濱島朗訳)

権力
 いずれにしても、2010年~2012年の間のどこかでドル/円は底を打ち、この底打ちをもって【ニクソン・ショック以来長らく続いてきた基本的(超長期的)な円高トレンドは終わりを告げる】と考えています。(『きっちり儲けたい人のFXチャートの鉄人 必勝分析術』田嶋智太郎)

為替
――日本の仏教とテーラーワーダがもっとも違うのは、どこでしょうか。

スマナサーラ●違いはたくさんありますが、いちばんはやはり日本の仏教がいわゆる祖師信仰だという点でしょうね。祖師信仰では、その宗派を開いた祖師さんの言うことは何でも、自分ではちょっとどうかなと思っても、信仰しなさいと強要します。つまり、祖師の色に染まるんですね。

(『希望のしくみアルボムッレ・スマナサーラ養老孟司
 とすれば、ヒトがおたがいどうしを理解するのは、もともと脳の中にどういう内容が詰っているか、の問題ではなく(ヒトによって異なるに決まっている)、それが働く場合の「形式」の問題だ、といわざるを得ない。(『ヒトの見方養老孟司
「僕はこんな類の学問には興味はないんだ。結局のところ、ほんの少しの銀貨、多少のお米や野菜のためじゃないか」(『ラーマクリシュナ』堀内みどり)

ラーマクリシュナ
 実は、中世には私たちが考えるような「国家」はありませんでした。確かに、国はありますし王もいます。しかし、それらを上から支配していたのはキリスト教の長たるローマ教皇でした。フランスという国はあっても、フランスを動かすのは王ではなく教皇です。つまり、国の中心が不透明なのです。そうなればフランス王の支配領域、つまりフランスという区の領域(国境)も曖昧なものになってしまいます。要するに、国家の概念は、その中心も領域も曖昧でぼんやりとしたものでしかなかったのです。人々も自分がどこの国に所属しているのかはっきりとは意識していません。中世の人に「あなたはどこの人ですか」と問えば、荘園や教区の名を挙げるでしょう。もっと大きな枠組みで問えば「私はクリスチャンです」と答えるでしょう。中世という時代は、国が分立しているというより一つのキリスト教世界ととらえるべきです。しかし、キリスト教の時代は、教皇による十字軍の失敗によって崩れはじめます。(『歴史の見方がわかる世界史入門 いまにつながるヨーロッパ近現代史』福村国春)

世界史
渡部●わかりやすい例は、南京陥落の前後、蒋介石は外国人記者と300回近く会談を繰り返しているのに、一度も大虐殺を口にしたことがなく、もちろん毛沢東も周恩来も、誰も言っていないことです。(『日本の敵 グローバリズムの正体渡部昇一馬渕睦夫

日本近代史
 僕が代替エネルギーを認めないというのは、どんな代替エネルギーを使おうが、エントロピー問題には変わりがないからです。(養老)『ほんとうの環境問題池田清彦養老孟司
 佐藤総理とテレビで初めて対談するという江藤淳氏を事前に紹介して鎌倉の佐藤氏の別荘で会食した折、どんな話題の連脈でだったろうか江藤氏が、彼の叔父さんの江頭豊氏がチッソの社長に在任中、前任者の任期中に起こった水銀事件が波紋を呼んで大きな社会問題となり、それにつけこんで佐藤内閣の厚生大臣がことを穏便に収めてやるからその代償を要求したが、江頭社長がそれを拒否したら、その意趣返しにたちまち大臣が先頭切ってチッソを弾劾し始めたと怒りを込めて報告したものだった。
 もちろんチッソがあの地域にもたらした災害について江藤氏は何の弁護もしはしなかったが、ただそうした他人の不幸にまでつけこんで奸計を企む政治家の悪辣さについて悲憤していた。
(『国家なる幻影石原慎太郎

水俣病
フルフォード●ワシントンD.C.は、余り知られていないけれども、アメリカではないのです。法律的に District of Columbia は、バチカンやロンドンの金融街シティと同じく、独立国家なんです。【法的に、アメリカ合衆国とは別に、株式会社 The UNITED STATES OF AMERICA というのがある】のです。海軍法にもとづいて1871年に設立された会社です。

飛鳥●それはすごい話だ。

フルフォード●本当ですよ。調べればわかる。

菅沼●そのとおりだ。

(『神国日本八つ裂きの超シナリオ菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄)
 正道はうっとりとなって、この詞に聞き惚(ほ)れた。そのうち臓腑(ぞうふ)が煮え返るようになって、獣(けもの)めいた叫(さけび)が口から出ようとするのを、歯を食いしばってこらえた。忽(たちま)ち正道は縛られた縄が解けたように垣の内へ駆け込んだ。そして足には粟の穂を踏み散らしつつ、女の前に俯伏(うつふ)した。右の手には守本尊を捧げ持って、俯伏した時に、それを額に押し当てていた。(『山椒大夫・高瀬舟』森鴎外)
 第二次世界大戦の余燼なお冷めやらぬころ、業界屈指の研究志向型企業であるメルク社のトップ、ジョージ・W・メルクは、同社の科学者に向けて次のような信条を披瀝(ひれき)した。「薬は人々のためのものであり、儲けのためのものではないことを、われわれは深く肝に銘じておくことにしよう。儲けはあとからついてくるものであり、このことさえ忘れなければ、儲けが消えてなくなることなどありえない。このことを肝に銘ずれば銘ずるほど、付随する儲けは大きくなるものである」。メルクのこの言葉は、今もなお同社の年次報告書に記載されており、医学界の大きな催しや会合のときはいちばん目立つところに展示されている。(『新薬ひとつに1000億円!? アメリカ医薬品研究開発の裏側』メリル・グーズナー:東京薬科大学医薬情報研究会訳)
 ところがここで、どうにも不可解な謎にぶつかる。それほど医療が大きく進歩しているなら、アメリカの精神障害者の数は、過去50年間で人口比で減少したはずだ。1988年にプロザックや他の第二世代の精神科治療薬が登場してからは、さらに減ったと期待していいところだ。障害者率は2段階で減少したはずである。ところが薬物療法革命が進むにつれて、アメリカの精神障害者の数は【劇的に増加】しているのである。しかもプロザックや他の第二世代の精神科治療薬の導入以来、一段とピッチを上げているのだ。何より憂うべきことに、この現代の疫病は今や子どもたちにまで広がっている。(『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』ロバート・ウィタカー:小野善郎監訳、門脇陽子、森田由美訳)

精神疾患
 人間の知的活動は、すべて論理という約束事から成り立っている。(『出口式ロジカル・リーディング 読書で論理思考を手に入れよう』出口汪)

読書
 1903年に生まれたジョン・フォン・ノイマンは、彼自身が推進した原水爆開発の核実験で何度も放射線を浴びたため骨髄癌を発症し、1957年に亡くなった。たった53年1か月あまりの生涯の間に、論理学・数学・物理学・化学・計算機科学・情報工学・生物学・気象学・経済学・心理学・社会学・政治学に関する150編の論文を発表した。天才だけが集まるプリンストン高等研究所の教授陣のなかでも、さらに桁違いの超人的な能力を示したノイマンは、「人間のフリをした悪魔」と呼ばれた。(『ノイマン・ゲーデル・チューリング高橋昌一郎

ゲーデル
 何部屋分もたまったデータが指し示しているのは、プロザックをはじめとする一群の薬に自殺暴力を誘発する可能性があり、それらを製造している企業がそれを知っているという事実だ。企業がそれを知りながら製造しているということは、私たちに医薬品やバイオ技術や、他のヘルスケア製品を与えているシステムに構造的欠陥があるということを意味する。その構造的欠陥によって、近い将来、サリドマイド被害でさえ小規模だと思わせるような、恐ろしい薬禍または医療禍を引き起こしかねない。(『抗うつ薬の功罪 SSRI論争と訴訟』デイヴィッド・ヒーリー:田島治監修、谷垣暁美訳)

精神疾患
「おそらく謙譲こそは思慮深い者が持つ唯一のしるしなのだろう」(『ブラック・プリンスデイヴィッド・マレル:山本光伸訳)
 ドイツのうちでも、さまざまな宗派が信仰されている地域の職業統計を調べてみると、ある現象が突出していることに気づくものであり、これについてはカトリック系の新聞や文献でも、ドイツ・カトリック派の会議でも、さかんに議論されている。それは資本家や企業の所有者だけではなく、教養の高い上層の社員たち、とくに近代的な企業のスタッフで技術的な教育や商業的な教育を受けている人々のうちでは、【プロテスタント的な】性格の強い人々が圧倒的に多数を占めるということである。(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神マックス・ウェーバー:中山元訳)

資本主義
 79年に解き放たれた力は、20世紀のかなりの部分を支配した社会主義ユートピアの終焉の始まりを意味していた。五つの物語――イラン革命アフガニスタンでの聖戦の始まり、サッチャーの選挙での勝利、ローマ教皇の初のポーランド巡礼、中国の経済改革への着手――は、歴史の筋道を従来とはまったく異なる方向へと向かわせた。長年無視されてきた「市場」と「宗教」という二つの力が、猛烈な勢いで舞い戻ってきたのが、1979年だった。(『すべては1979年から始まった 21世紀を方向づけた反逆者たち』クリスチャン・カリル:北川知子訳)
【歌】
形声。音符は哥(か)。字はまた謌(か)に作る。哥は■(可-口/木の枝の形で、杖)で■(サイ)(神への祈りの文である祝詞を入れる器)を殴(う)ち、その祈り願うことが実現するよう神にせまるの意味で、「可(べ)し」という命令と「可(よ)し」という許可の二つの意味を持っている。欠(けん)は立っている人が口を開いて叫んでいる形で、神にせまるとき、その神に祈る声にはリズムをつけて、歌うように祈ったのであろう。その声の調子を歌といい、「うたう、うた」の意味に用いる。国語の「うた」も「拍(う)つ、訴う」と関係があるように思われる。詩歌(歌をうたうこと)の詠は声を長くのばす歌い方。歌は強くせまるような歌い方であろう。歌謡(うた)の謡(謠)は「わざうた」(時事の風刺などを含むはやり歌)で、祭肉を供えて神にねだるように歌うことをいう。唱はみなでそろって勢いよく合唱するという歌い方である。
(『常用字解 第二版白川静

漢字
 コロンブスは「異教徒のインディアンを聖なる信仰に改宗させる」と息巻いた。それは、何千人もの先住民を奴隷として輸出するための言い訳でもあった。先住民を捕らえようとして結局皆殺しにしてしまっても、たいした問題にはならなかった。というのも、先住民を殺した連中はこう言い逃れたのだ。彼らはキリスト教に接し、永遠の生命を得るチャンスを手にしたのだ、と。西欧人は同じ理屈を言って女を強姦した。コロンブス自身の言葉によれば、彼はむちで先住民の女を「激しく」打った後で、「快楽を味わった」という。(『キリスト教暗黒の裏面史 誰も書かなかった西欧文明のダークサイド』ヘレン・エラーブ:井沢元彦監修、杉谷浩子訳)
 爪は彼が絞首台の上に立ってもまだ伸びつづけているだろう、いや宙を落ちて行くさいごの10分の1秒のあいだも。彼の目は黄色い小石と灰色の塀を見、彼の脳はまだ記憶し、予知し、判断をつづけていた――水たまりさえ判断したのだ。彼とわれわれはいっしょに歩きながら、同じ世界を見、聞き、感じ、理解している。それがあと2分で、とつぜんフッと、一人が消えてしまうのだ――一つの精神が、一つの世界が。(『オーウェル評論集ジョージ・オーウェル:小野寺健編訳)
 しかし、グローバル化が速度を増して進むなかで、何かが変わってしまった。かつて異文化の狂気の概念にみられた多様性は、休息に姿を消しはじめた。アメリカで認識されて社会に広められたいくつかの精神疾患――うつ、PTSD、拒食症など――は、今や文化の壁を越えて世界中へ伝染病のように広がっている。土地固有の精神疾患はアメリカ製の疾病分類や治療法によって、押しつぶされつつある。(『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ:阿部宏美訳)
 システマの産みの親は、スペツナズの教官だったミカエル・リャブコです。代々、戦士として戦ってきた家に生まれたミカエルは、5歳の頃から家伝の武術を伝授され、15歳でスペツナズに入隊。その後、軍人として華々しい戦果を挙げ、スペツナズ向けのテキストを執筆した事もある戦闘のスペシャリストです。その彼がリャブコ家に伝わっていた武術をもとにして生み出したのが本書で紹介するシステマです。(『4つの原則が生む無限の動きと身体 ロシアンマーシャルアーツ システマ入門北川貴英
 いま突如として、イギリスの地政学者ハルフォード・マッキンダーの亡霊が甦りました。20世紀の初めに活躍したこの地政学の泰斗は、「東欧を支配するものがハートランドを制し、ハートランドを支配するものが世界本島(ユーラシア大陸)を制し、世界本島を支配するものが世界を制する」と喝破しました。このハートランドの核をなすのがロシアとウクライナなのです。(『世界を操る支配者の正体馬渕睦夫
 文化人類学では、人間の文化は自分たちを取り巻く世界を構造化するものであるとする。その構造は、その文化を担う人々によって明示されている。それとは気づかぬまま、人々はその構造に従って認識し行動する。優劣を付けたり、差異化さらには差別したり、グループ分けしたり、強い関係、弱い関係を結んだり、関係を結ぶことを拒否したりする。(『ケガレ』波平恵美子)
【渡邉】いつも例に引くのですが、ノブレス・オブリージュ=貴族の義務という言葉がありますでしょう? 貴族の義務として、貧しき人々に分配するという。これは決して純粋な善意などではなく、貴族はそうしないと自分たちの身が危うくなるので分配するわけです。分配しないで一部の人(貴族)たちだけが蓄えると、政権が引っくり返ってしまう。(『仁義なき世界経済の不都合な真実』三橋貴明、渡邉哲也
 君は博識なことを話すが
 悲しむ値打ちのないことを嘆いている
 真理を学んだ賢い人は
 生者のためにも死者のためにも悲しまない

【わたし】も 君も ここにいる全ての人々も
 かつて存在しなかったことはなく
 将来 存在しなくなることもない
 始めなく終わりなく永遠に存在しているのだ

 肉体をまとった魂は
 幼年 青壮年を過ごして老年に達し
 捨身して直ぐ他の体に移るが
 自性を知る魂はこの変化を平然と見る

(『神の詩 バガヴァッド・ギーター』田中嫺玉訳)

バガヴァッド・ギーター
 20世紀の一大惨劇が「共産主義国家の勃興と崩壊」のドラマであったことは周知のこととなった。そして最大の悲劇といえば、ひとしく「社会主義者」の名を冠した3人の政治家、ヒトラースターリン、毛沢東の独裁政治によって、数千万の多くの無辜の人々が殺されたことである。しかし歴史家としていわせてもらえば、それらに隠されているのが、隠れ「社会主義者」であったルーズベルトの下での蛮行である。そのひとつは、日本を戦争に引きずり込むことによって、日本を「社会主義化」しようとしたことである。それは広島長崎への原爆投下を伴っていた。ここ20年のアメリカ国立文書館から公開された資料はそのことを示している。(『戦後日本を狂わせたOSS「日本計画」 二段階革命理論と憲法』田中英道)
 宗教的な意味における平等の概念は仏教によってはじめて自覚され、アジア諸国に伝えられるにいたった。(『東西文化の交流中村元
 書きたくないことだけを、しのんで書き、困難と思われたる形式だけを、えらんで創り、デパートの紙包さげてぞろぞろ路ゆく小市民のモラルの一切を否定し、十九歳の春、わが名は海賊の王、チャイルド・ハロルド、清らなる一行の詩の作者、たそがれ、うなだれつつ街をよぎれば、家々の門口より、ほの白き乙女の影、走り寄りて桃金嬢の冠を捧ぐとか、眞なるもの、美なるもの、兀鷹の怒、鳩の愛、四季を通じて五月の風、夕立ち、はれては青葉したたり、いずかたよりぞレモンの香、やさしき人のみ住むという、太陽の国、果樹の園、あこがれ求めて、梶は釘づけ、ただまつしぐらの冒険旅行、わが身は、船長にして一等旅客、同時に老練の司厨長、嵐よ来い。竜巻よ来い。弓矢、来い。氷山、来い。渦まく淵を恐れず、暗礁おそれず、誰ひとり知らぬ朝、出帆、さらば、ふるさと、わかれの言葉、いいも終らずたちまち坐礁、不吉きわまる門出であった。(「喝采」)『太宰治全集 2』太宰治
 例えば17世紀後半を主たる活躍の時期としたニュートン(重要な主著の一つ『光学』の出版は18世紀に入ってからのことであり、ニュートン自身は1727年まで生きたが)は、決して「近代科学者」ではない。むしろ、ここで言う「魔術」に近い自然理解を持っていたと言うことができるだろう。それは、彼が錬金術に生涯没頭していたという事実だけから言うわけではない。むしろ、彼の自然理解の全体が、このような15・16世紀ルネサンスの思想的な背景を色濃く背負っているからである。(『奇跡を考える 科学と宗教』村上陽一郎)

科学と宗教
 このように、おいしい料理を賞味したいのだが、料理を作ったことがないのでおいしい料理を食べることができない、などという人はいません。料理を賞味する人には、料理を作るための技能と知識は要求されません。
 同じように、決算書を読む人にも、決算書を作るための知識は不要です。
(『決算書はここだけ読め!』前川修満)
【日本を経由してアメリカに渡ることができた、この約6000人のユダヤ難民のなかから、その後、アメリカで国家・国境を越えたグローバルな金融システムを立ち上げ、ウォール・ストリートに進出する人たちが現れ、今日のグローバル経済の基礎がつくられたのである。】
 その象徴がシカゴの商品・金融先物のマーカンタイル取引所であり、同取引所を創設した名誉会長のレオ・メラメッド(現在82歳)氏はポーランド生まれ、リトアニアに逃れて杉原千畝の「命のビザ」によってアメリカに渡った人だ。(藤井)
(『世界経済の支配構造が崩壊する 反グローバリズムで日本復活!菅沼光弘藤井厳喜
 私たちが会話下手なのは、教育云々ではなく、むしろ、脳が未発達であることが大いに関係している。というのも、社会に対する意識や相手に共感する力、それに関連した言語スキルをつかさどる脳の領域が完全に機能するようになるのは、人間が30歳を迎えるころなのだ。(『心をつなげる 相手と本当の関係を築くために大切な「共感コミュニケーション」12の方法アンドリュー・ニューバーグ、マーク・ロバート・ウォルドマン:川田志津訳)

共感コミュニケーション
 薄暗くほこりっぽい店内で探索していると、しだいしだいに、自分のなかでなにかが煮詰まっていくような息苦しい気分になり、快楽を通り越して苦役に近い域にはいりこんでいった。しかし、その時には、こうした苦痛をつらいものとは考えず、むしろ〈蒐集主義者〉(60年代風に言えば)にとっての冬の時代、〈オタク教信者〉(今風に言えば)としての受難とか受苦という感じでうけとめていた。(『編集狂時代』松田哲夫)
 勝者敗因を秘め、敗者勝因を蔵(ぞう)す。
 勝った戦争にも敗(ま)けたかもしれない敗因が秘められている。敗けた戦争にも再思三考すれば勝てたとの可能性もある。
 これを探求して発見することにこそ勝利の秘訣がある。成功の鍵がある。行き詰まり打開の回答がある。これが歴史の要諦(ようたい)である。
(『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ小室直樹

日本近代史
 人は確かに、「ある時代のある場所に“まず”生まれ出た」ということを、「ある時代のある場所で“最後には”死ぬ」ことと同じように、選択の余地なき前提すなわち一種の「宿命」として受けとらざるを得ない。(『一下級将校の見た帝国陸軍山本七平
 海舟が蘭学を志したのは、「英米仏露の列強による脅威に対処するために、西洋兵学の必要性を痛感したため」であるといわれています。(『勝海舟とキリスト教』下田ひとみ)

勝海舟キリスト教
 強烈な光線が闇を切り裂いた。その中に、必死に逃げまどう女の姿が浮かび上がる。次の瞬間、銃声が鳴り響いた――テロリストがテロリストに向けて放った銃弾。一発目が背骨の低部に命中したのだろう、女は大きくのけぞり、金髪が滝のようにはじけて流れ落ちた。つづいて三発、狙撃手の自信のほどを示すように間を置いて発射され、襟首と頭部に命中した。女は泥と砂の小山のほうへ吹っ飛び、その指が地面をかきむしる。血に染まった顔はしかし、地面に突っ伏しているためによく見えない。やがて断末魔の痙攣が女の全身を走り抜け、と同時に、すべての動きが停止した。
 彼の恋人は死んだ。彼は自分がやらねばならないことをやったのだ。ちょうど、彼女が自分のしなければならないことをしたように。彼らはお互いに正しく、お互いに間違っていた。
(『狂気のモザイクロバート・ラドラム:山本光伸訳)
【人生は苦悩に満ちている】。
 仏陀の四聖諦(四つの聖なる真理)の一番目を瞑想しながら、ランボーは表面が磨き上げられた、美事な作りの古代の竹弓を握った。その弓を左脇に垂らし、眼を閉じる。息を吸い込み、吐き出す。そして、心の動揺を鎮める。筋肉で覆われた上半身が波打つ。力強い胸部と背中が拡がり、縮む。
(『ランボー3 怒りのアフガンデイヴィッド・マレル:沢川進訳)

ブッダ
 問題は生き延びることだけなのだ。
 存在そのものなのだ。
 苦痛さえすばらしいものに感じることができる。精神を正しい位置に置いてやればいい。過去と未来を心から閉め出し、いまこの瞬間が苦痛に満ちていたとしても、現在の鮮烈さだけを考えるようにすればいいのだ。
(『ランボー 怒りの脱出デイヴィッド・マレル:沢川進訳)
 これほど周囲に敏感になってことはこれまでになかった。戦争中、行動を起こす瞬間にこれに似た感情を経験したことはある。あらゆる動きがスムーズで正確になるのだ――走り、照準をつけるために身体を反転させ、そっと引金を引きしぼると、たしかな手ごたえが反動となって身体に伝わってくる。洗練された動きに生命がかけられていたのだ――そんなときのかれには肉体しかない。精神はどこかへ去っているのだ。その瞬間に存在しているのは、動きとまったく一致するかれの肉体だけなのだ。連合軍内にいた現地兵たちが、それは“ゼン”の境地だと教えてくれた。完全に停止した瞬間に到達する道で、長期にわたる困難な訓練と精神統一、そして固い決意でもってしなければ完成されないものなのだ。(『一人だけの軍隊 ランボーデイヴィッド・マレル:沢川進訳)
「軍隊は人を殺しておいて、そのあとで死を美化するのよ」(『血の誓いデイヴィッド・マレル:佐宗鈴夫訳)
 歯が痛いとき、われわれは当然、歯のことを直接に「知っている」と思っている。しかし、実際に知っているのは、脳のなかの知覚に関わる部位の、歯に相当する部分に、歯の痛みに相当する活動が起こっている、ということだけである。(『養老孟司の人間科学講義養老孟司
 日本人はいわば「隠れヒンドゥー教徒」であるといっても過言ではありません。(『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済上村勝彦

バガヴァッド・ギーター
 ところが、このグローバリズム共産主義は根は一つなのです。(『国難の正体 世界最終戦争へのカウントダウン馬渕睦夫
 実は89年2月のソ連軍完全撤退後も、ソ連は、アフガニスタン社会主義政権に武器の供与を行っていた。同国が後押ししていた社会主義政権のナジブラ政権が、アフガニスタン反政府ゲリラのムジャヒディンとの戦闘に持ちこたえられそうになかったからである。
 一方、米国も、ムジャヒディン側への武器の援助を続けていた。マルタで交わされたブッシュとゴルバチョフの握手の裏側で、アフガニスタンで米ソ双方は代理戦争を繰り広げていたのである。
(『アフガン戦争の真実 米ソ冷戦下の小国の悲劇』金成浩)

アメリカ
 今すぐCO2を削減しなければ、人類は大変なことになる、といった短兵急な話は、今すぐお金を振り込んでいただかなければ、御主人は犯罪者になってしまいますよ、といった振り込め詐欺と同じようなものだと思って間違いない。恐怖心を煽るのは他人を騙す際の常套手段である。(『正義で地球は救えない池田清彦養老孟司

環境問題
 インドや東南アジアに行くと、高温多湿な環境の中で、生命が簡単に死に、しかし、あっという間に生まれてくる強力な生命力を感じます。人が何度も転生し、別の生物に生まれ変わる輪廻という発想が出てくるのも実に自然に思えます。至るところに神々がいるという発想も、豊かな自然の中から生まれてきたのでしょう。(『池上彰と考える、仏教って何ですか?』池上彰)

アニミズム仏教
 20世紀の歴史には、列強のなかでもとりわけアメリカが少なからず虐殺を直接的にあるいは間接的に背後で扇動しただけでなく、ひとたび虐殺が生じたときには常に意図的に虐殺を抑制する政策はとらなかった、という事実が刻まれている。(『大量虐殺の社会史 戦慄の20世紀』松村高夫、矢野久編著)
「ジェイソン・ボーンという名前に聞き覚えはないかね」
「アジアに駐在していてその名前を耳にしたことがない人間なんていませんよ。35件から40件の殺人をやってのけ、これまでやつのために仕掛けられた罠(わな)という罠を巧みに逃れてきた殺し屋です」
(『殺戮のオデッセイロバート・ラドラム:篠原慎訳)
 前のまえにある物は、はじめて見る物ばかり。なにかが、ぼくをひっぱった。ひっぱられて、しばらくあるく。すると、おされてやわらかい物にすわらされる。ばたん、ばたんと音がする。
 いろいろな物が見えるけれど、それがなんなのか、わからない。だからそのまま、やわらかい物の上にすわっていると、とつぜん動きだした。外に見える物は、どんどんすがたや形をかえていく。
(『記憶喪失になったぼくが見た世界』坪倉優介)

記憶
 儒家は、外部からの強制をよしとしない。それは法家の発想である。それと同時に、無為自然をもよしとしない。それは老荘の発想である。儒家は、人間の本性に根ざしながら、それに基づく作動を他者と調和させ、学習して成長する道を求める。(『生きるための論語安冨歩

儒教
 飛び抜けて高い収入のある人にしか買うことのできないような本を書くというのは、文学を娼婦にすることにほかならない。(『ユダヤ人カリカチュア 風刺画に描かれた「ユダヤ人」』エードゥアルト・フックス:羽田功訳)

ユダヤ人
 その記事は事実と憶測から成る二部構成で、証拠が尽きたところから推測が引き継ぐといった体のものだった。(『暗殺者ロバート・ラドラム山本光伸訳)