ひとつの戦争から別の戦争へと、200万人のアメリカ人がイラクアフガニスタンの戦争に派遣された。そして帰還したいま、その大半の者は、自分たちは精神的にも肉体的にも健康だと述べる。彼らは前へと進む。彼らの戦争は遠ざかっていく。戦争体験などものともしない者もいる。しかしその一方で、戦争から逃れられない者もいる。調査によれば、200万人の帰還兵のうち20パーセントから30パーセントにあたる人々が、心的外傷後ストレス(PTSD)――ある種の恐怖を味わうことで誘発される背音信的な障害――や、外傷性脳損傷(TBI)――外部から強烈な衝撃を与えられた脳が頭蓋の内側とぶつかり、心理的な障害を引き起こす――を負っている。気鬱、不安、悪夢、記憶障害、人格変化、自殺願望。どの戦争にも必ず「戦争の後」があり、イラクとアフガニスタンの戦争にも戦争の後がある。それが生み出したのは、精神的な傷害を負った50万人の元兵士だった。(『帰還兵はなぜ自殺するのか』デイヴィッド・フィンケル:古屋美登里訳)