なお、イギリス人とオランダ人にどれほど恨まれているかについて、日本人はまったく無自覚だ。日本はアメリカにこそ敗北したが、その過程でオランダを踏み潰し、大英帝国と刺し違えているのである。
 日本と戦ったがゆえに、オランダもイギリスもその版図を失ったのだ。しかも戦闘においては、日本に対して完敗の連続である。日本は英蘭に対しては戦勝国である意識が欠落しているのだから、敗者の怨念に無自覚なのは当然である。
(『歴史問題は解決しない 日本がこれからも敗戦国でありつづける理由』倉山満)
 都市というのは実は人間が考えたものしか置かないという約束のあるところなんです。ですから、都市は今、一番極端には、地面すら自然にあったものは気に入らないんで、泥があると気に入らないから、徹底的に舗装(ほそう)しちゃうんですね。(『脳と自然と日本養老孟司
 瞑想をつづけていると、あるときから力まずに精神集中ができるようになる。リラックスしながらも心をとぎすまし、すこし離れたところから自分を観察できるようになる。それまでは四苦八苦していたのに、しだいに瞑想にのめり込んでゆく。もう施設の不備など気にならない。規則はかえっていい味方であることがわかる。あっという間に時間が流れてゆく。心は夜明けの山奥の湖のように静まりかえり、周囲の景色をあますところなく映す鏡のようになる。近づいて湖をのぞき込むと、深い底まで見える。ここまで心が澄んでくると、一瞬一瞬がじつにたしかなものになり、美しく、やすらいで感じられる。(『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門 豊かな人生の技法』ウィリアム・ハート:日本ヴィパッサナー協会監修、太田陽太郎訳)

ヴィパッサナー
 137億年前の宇宙がプラズマ状態にあったということは、いわば分厚い雲が宇宙を包んでいるようなものですから、その先の様子は光をキャッチする通常の望遠鏡では見ることができないのです。
 ただし、それが「見える」ようになる可能性がないわけではありません。その手段が、重力波です。光は「プラズマの雲」に邪魔されてしまいますが、重力波は伝わります。
(『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司)
 時間の矢の存在を物理学的に説明しよとすると、ぜんぜん自明のことではない。19世紀のボルツマン以来多くの学者がその答を求めてきた。本書では時間の矢の存在が宇宙論と深く関わっていることを示す。そして時間の矢が宇宙の初期条件によって規定されることを主張する。こういった立場を「時間の矢の宇宙論学派」とよぶ。(『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密松田卓也二間瀬敏史

時間論
 犬は報酬なしで芸を繰り返し行なうが、別の犬が同じ芸でソーセージ片をもらうのを目にした途端、もうやるのを拒否する。(『道徳性の起源 ボノボが教えてくれることフランス・ドゥ・ヴァール:柴田裕之訳)
 この日のわたしはただ無心で、ひたすら前だけを見て走ると決めていたのだが、そんなに簡単にすむことではなかった。走りながら、沿道の人々の中に、知っている顔はないか、一緒にこのあたりで悩みを語り合った人はいないか、と探していた。しかし、誰もいなかった。彼女たちだってもう40歳前後だ。家事や仕事に追われているかもしれない。とうにこの街を去って、どこかで日々の暮らしを営んでいるだろう。そんなことを考えながら、彼女たちのひとりひとりに謝罪していた。
 はからずも24時間マラソンは、懺悔(ざんげ)と謝罪のマラソンになったのである。しかし、それは走ってみて初めてわかったことであり、走る前は、何度もいうように無心で走ることしか念頭になかった。
(『杉田』杉田かおる)

創価学会