彼女はアメリカ先住民のスー族のことを思った。1950年代、彼らは大統領との会見のためにノース・ダコタにある先住民居住地から飛行機に乗せられた。ジェット機は彼らを数千キロ離れているワシントンDCまで運んだ。首都の空港到着ロビーに足を踏み入れた彼らは床に座り込んだ。待機しているリムジンへどんなに勧められても無駄だった。彼らはそのまま1ヵ月その場に座り続けた。飛行機に乗せられて運ばれたからだと同じ速さで移動することができない魂を待っていたのだった。(『裏切りカーリン・アルヴテーゲン:柳沢由実子訳)