戦争中に「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」というポスターがあった。「工夫」の「工」を×で消した人がいたそうだ。笑いのなかにほろ苦さ、物悲しさがこもっている。「ぜいたくは敵だ」という標語には、「敵」の上に「素」という一字が書き加えられた。こうした言葉遊びは、当時の庶民感情を伝えて歴史に残っている。(『深代惇郎の天声人語深代惇郎