中島梓●ただ着物というのは、着物だけじゃないんですよね。すべてと結びついている。

杉浦●立居振舞。

中島●立居振舞もさることながら、まず針が持てなければいけない。というのは、自分で半衿をかけなければいけないでしょう。もちろん自分で着られなければいけないというのもそうです。髪も自分でなんとかできなきゃいけないというのもある。あるいは手入れもできなきゃいけない。自分で洗い張りしろとまでは言わないけれども、少なくともそのくらいまめに手入れをしなければいけない。
 とにかくなにかといろんな文化と全部つながっている。だからその文化の型というのが、いまの日本の普通の文化とは非常に合わない。たとえば電車に乗っているんだって、歩きづらいとか、立っていると大変だとか、いろんなことがある。非常に広いものと結びついちゃっているから、広い範囲で受け入れられなくなってきているんじゃないかと思う。

(『江戸へようこそ杉浦日向子

江戸
 中国人が「街道」という語を見たら、多分「街の道」つまり市街地の中の道、と思うだろう。
 無論そうではない。「街道」は遠い地域を結ぶ幹線道路、ハイウエイである。
 もとは「海道」と書いた。海沿いの道、あるいは一部海路を含む道である。代表的なのが京都から東国(鎌倉など)へ行く道である。単に「海道」とも言い、東国へ行く道ゆえに「東海道」とも言った。海沿いでなくとも主要幹線道路は「海道」と言った。
(『漢字雑談』高島俊男)

漢字
 孫子は乱世におけるリーダーの心のもち方や必要な器量について述べた兵書なのです。『孫子』は、なぜリーダーの立場から書いたのでしょう。
 それは兵が凶器だということをよく知っていたからです。(『まんが 孫子の兵法』武岡淳彦監修・解説、柳川創造解説、尤先端作画、鈴木博訳)
 しかし20世紀初頭の発表当時は、あまりにも常識とかけ離れているため、学界ではほとんど理解されませんでした。「大陸が動くはずはない」とする当時の“正当的な”考えでは、二つの大陸に共通する化石の存在は、かつて両大陸が細い“陸橋”でつながっている時代があったからであると説明するのです。陸橋は二つの大陸をつなぐ細長い陸地や潮が引いて現れる島伝いの道のことで、それを伝って海を渡れない生物が移動したと考えるのです。(『生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像』中沢弘基)
 さらに重大だったのは、ソ連に通じていた「原爆スパイ」たちである。「マンハッタン計画」の内部からは二人の物理学者クラウス・フックスセオドア・ホール、および技術者のデイヴィッド・グリーングラスが、ソ連に多くの重要な機密の技術情報を伝えた。それは、通常のウランから高濃縮ウランを抽出するための複雑な過程、生産施設の技術的な図面、爆縮技術の工学的原理などである。この爆縮技術によれば、早期にプルトニウムを用いた原子爆弾の製造が可能になり、そもそもプルトニウムは高濃縮ウランよりも精製がはるかに容易なのであった。
 彼らがアメリカ原爆の秘密をソ連に漏らしたことで、ソ連は何年も早く、きわめて低いコストで核兵器を開発することができた。ヨシフ・スターリンは、スパイ活動によってソ連がいち早くアメリカの核兵器独占を破ったことから、初期冷戦でのアメリカとの対決において大変大胆な外交戦略がとれるようになったのである。
(『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア:中西輝政監訳、山添博史〈やまぞえ・ひろし〉、佐々木太郎、金自成〈キム・ジャソン〉訳)
 べつに、すべての軍服が、ファシズムに結びつくと思っているわけではない。
 しかし、あらゆる軍服の歴史を通じて、やはりナチス・ドイツの制服くらい、軍服というものの神髄にせまった傑作も珍しいようだ。あの不気味に硬質なシルエット。韻を踏んでいるような、死と威嚇のリフレイン。実戦用の機能を、いささかも損なうことなく、しかも完全に美学的要求を満足させている。
(『内なる辺境安部公房
 私はスプーンをもってマイクのようにハスケルに向けた。
「あなたはどうなんですか? 勘定書について、なにかコメントはありませんか」
(『突然の災禍ロバート・B・パーカー:菊池光訳)
 生きる意味は
 どこに落ちているんだろう。
 きれいに死ねる自信を
 誰が持っているんだろう。
 自分は風にのって流れていく木の葉か、
 でなければ、あんたが今
 くつの裏でかわいがった吸い殻ではないのか。
 存在なんてものにこだわっていたら、
 落ちていくよ。
『どこへ?』
 橋の下さ。
(『適切な世界の適切ならざる私文月悠光
 実際に、ビスマルクが生涯において、ブライヒレーダー家やロスチャイルド家と交わした書簡は1000通を超えている。ブライヒレーダーも毎日のようにドイツの政治情勢、軍事情報、金融情報をロスチャイルド家あてに報告していた。これらの手紙のやり取りから正確に読み取れるのは、ブライヒレーダーとロスチャイルドという力強い後ろ盾がなければ、ビスマルクはドイツの政界に身を置くことはできなかったし、ドイツの統一という偉業もなしえなかったであろうことだ。(『通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす宋鴻兵

通貨戦争
水野●その価格決定権をアメリカが取り返そうとして1983年にできたのが、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート先物市場ですね。
 石油の先物市場をつくるということは、石油を金融商品化するということです。いったんOPECのもとへと政治的に移った価格決定権を、石油を商品化することで取り返そうとしたんですね。
(『超マクロ展望 世界経済の真実水野和夫萱野稔人
 過ちに気づいても改めない。それがほんとうの過ちだ。

 過ちて改めざる、これを過ちと謂う――『論語』衛霊公篇

(『中国古典 リーダーの心得帖 名著から選んだ100の至言守屋洋
 自分自身の存在がおびやかされているのになぜ他者にやさしくできるのだろう? 自分のお腹はペコペコなのになぜ他者の労をねぎらえるのだろう?(『地下足袋の詩(うた) 歩く生活相談室18年入佐明美
 カール・ヴィルムヘルムは実に紳士だった。数学者の天国があるとすれば、そこにある豪華なアパートの部屋はいくつか、この人がここを訪れたいと思ったとき、いつでも使えるよう、確保しておかなければならない。ガウス少年の才能を聞き及ぶと、公はガウスに会いたいと言った。(中略)公は人を見る目があり、この少年が気に入ると、死が二人を分かつまで、ずっとガウスを庇護し、安定した経済的支援を与えて、若いガウスが数学者、物理学者、天文学者としての長い、傑出した生涯に乗り出せるようにした。(『素数に憑かれた人たち リーマン予想への挑戦ジョン・ダービーシャー松浦俊輔訳)
 とくに説明する必要はないが、近代国家はひたすら軍備によってつくられた。(『戦争と資本主義ヴェルナー・ゾンバルト:金森誠也)
 冒瀆(ぼうとく)の印は私たちの中に永遠に刻まれ、それに立ち会ったものたちの記憶に、それが起きた場所に、これから語られる物語の中にずっと残るはずだった。(『休戦プリーモ・レーヴィ:竹山博英訳)
 この理論は、数学的に正確に表現するならば「指数関数的膨張モデル」ということになり、私が最初に提唱したときはそう呼んでいました。しかし、およそ半年後、グースは私とは独立に同じ指数関数的膨張モデルの論文を学術誌に投稿し、この理論に「インフレーション」と名づけました。命名の巧みさや宇宙の平坦性・地平線問題についての明解な記述から、いまでは「インフレーション理論」として世界的に流通するようになりました。(『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか佐藤勝彦
 そして、その惑星がほどよく暖まるよう、近からず遠からずの距離で恒星の周囲を回転させたいと考えていることを説明した。さらに惑星を構成する各成分の、分量と必要経費を算出した見積もりを示した。いったい彼らの目的は何なのか? 種々の条件を勘案すると、その小さな球体には、きわめて興味深く、楽しい現象があらわれるらしかった。
 それはすなわち、生命。
(『神を見た犬』ブッツァーティ:関口英子訳)