「人の上に立つには――」
 と、ことばを切った(し)は、足もとに目をおとし、
「たとえば、ここに植える菽(まめ)のいうことが、ききとれるようになることだ。天の気も地の気も、その葉や茎にうつり、やがて結びあって実となる。いくら故実(こじつ)を識っても、名なし草にひとしい民の、声なき声を聴きとる耳はそだたぬ。【まめ】に教えてもらうがよい」
(『天空の舟 小説・伊尹伝宮城谷昌光
 このころ、桑の木は神木で、「桑からなにが生れるか」と問われた者の十人中十人が、「日」(じつ)すなわち「太陽」とこたえたであろう。つまり太陽の数とは無限ではなく、十個あると考えられ、その一個ずつが、毎朝桑木から生れて、天に昇ると信じられていた。したがって、桑木とは太陽を生む木であり、そこから生れた児とは太陽でなくてなんであろう。(『天空の舟 小説・伊尹伝宮城谷昌光
 ユゴーはからくり人形を見つめた。とても修理できるとは思えない。しかも人形は以前よりずっとひどい状態だ。けれど、まだ父さんのノートがある。ノートの絵を見ながら、なくなった部品を作り直すことができるかもしれない。
 やらなきゃ。その気持ちがだんだんと強くなる。もしこの人形を修理することができたら、ぼくはひとりぼっちじゃなくなる。
(『ユゴーの不思議な発明』ブライアン・セルズニック:金原瑞人訳)
 ミュラーとシモンズは、「クオンツ」の名で知られる、一風変わった投資家たちの頂点にいた。クオンツは、頭がおかしくなりそうな数式やスーパーコンピュータを駆使して、何十億ドルもの金をあっという間に稼ぎ出す人種だった。(『ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち』スコット・パタースン:永峯涼訳)
 チャート45で見るが、(※アメリカの)短期金利が5%を切ったことはほとんどなく、10%近いことも少なくなかったし、数回は(国内が平和なとき)20%や25%まで上昇したこともある。これは当時のアメリカがいわゆる発展途上国だったからで、ヨーロッパから資金を取り入れるためにはリスクが高い分だけ超高金利でなければならなかった。(『チャートで見る株式市場200年の歴史』ケン・フィッシャー:長尾慎太郎監修、井田京子訳)
 今の時代はどうしてゆとりがないのかというと、先に起こるべき楽しみをどんどん手前に引き寄せて、それを使い果たしてしまうから、先に楽しみが持てないのです。そうすると、心にゆとりがなくなり、余裕がなくなってたえず焦る。そして、何か先に楽しみを探す。こういうふうになってしまうわけです。(『小さな実践の一歩から鍵山秀三郎