たとえ「憲法」と題された法律があったとしても、憲法は本質的に慣習法なのです。大事なのは法の文面ではなく、慣習にあるのです。
 つまり、たとえ憲法が廃止されなくても、憲法の精神が無視されているのであれば、その憲法は実質的な効力を失った、つまり「死んでいる」と見るのが憲法学の考え方なのです。
 だからヒトラーが政権を取って、全権委任法が制定されたら、そこで憲法は死んだと考える。憲法の精神が行われなくなった時点で、その憲法は無効になったというわけです。
(『日本人のための憲法原論小室直樹