孤独には、「本当の孤独」と「ニセモノの孤独」があります。(『孤独と不安のレッスン よりよい人生を送るために鴻上尚史
 かつて大根足などというけしからぬ喩えがあったが、大根といえば古くはうら若い女性の白くみずみずしい腕の形容だった。ただし、訓(よ)みはオオネ。(『季語百話 花をひろう』高橋睦郎)
 実際、かれが注意深く聞いていたのは、話の内容ではなく、 猗房(いぼう)という娘がもっている声の大小、明暗、澄濁(ちょうだく)など、いわば声の生まれつきの品格である。
 ――男女を問わず、人を鑑(み)るには、まず声だ。
 と、この老人は信じている。話し方にとらわれてはならない。話し方は、生来というものではなく、変化してゆく。変化するものにこだわれば、けっきょく人を見損(みそこ)なってしまう。
(『花の歳月宮城谷昌光
 各家をかぞえるときは(こ)といい、戸がまとまって里(り)となり、里がまとまって(きょう)となり、郷がまとまって県となる。(『花の歳月宮城谷昌光
 それゆえ、幸福な生とは、正しい確かな判断にもとづいて確立されており、不変なものである。そのとき、心は澄みわたり、いっさいの悪から解放され、深い傷はもちろんのこと、かすり傷さえも免れるであろう。
 また、自分の立場につねに立ち、たとえ運命(フォルトゥナ)〔偶運〕が怒って攻撃してきても、自分の座を擁護するであろう。(セネカ
(『ヘレニズムの思想家』岩崎允胤)
 米中央情報局(CIA)の元諜報員で、民間セキュリティー会社カスター・バトルズ社を創設した34歳のマイク・バトルズは、ずばりこう言った。「イラクに広がる恐怖と無秩序は、わが社に有利な将来を約束している」。バトルズは、まだ無名で経験もない自分の会社にとって侵攻後のイラクの混乱状態はじつに好都合であり、連邦政府から約1億ドルの契約を受注するチャンスも夢ではない、と嬉々として語っている。彼の言葉は、現代資本主義のキャッチコピーとしても使えそうだ。「恐怖と無秩序は躍進の新たな一歩を導くきっかけになります」といったところだろう。(『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴くナオミ・クライン:幾島幸子、村上由見子訳)

ショック・ドクトリン
 ふだん、感情を動かさない人や、同じ方向にしか動かさない人は、感情がなまって、やがて、感情を失い始めます。(『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント鴻上尚史
 人は、海のようなものである。あるときは穏やかで友好的。あるときはしけて、悪意に満ちている。ここで知っておかなければならないのは、人間もほとんどが水で構成されているということです。(『アインシュタイン150の言葉』ジェリー・メイヤー、ジョン・P・ホームズ編)

アインシュタイン
 求められているのは「自分は価値のある人間だ」という証であり、その確証を得て安心したいがために、身近な人々の承認を絶えず気にかけ、身近でない人々の価値を貶(おとし)めようとする。見知らぬ他者を排除することで、自らの存在価値を保持しようとする。たとえそれが悪いことだと薄々気づいていても、仲間から自分が排除されることへの不安があるため、それは容易にはやめられない。そして底なしの「空虚な承認ゲーム」にはまってしまうのだ。(『「認められたい」の正体 承認不安の時代』山竹伸二)
 そしてなにより、彼らは私に光の存在を思い出させてくれた。彼らは曇りの日にはさえない歌しか歌わないのに、雲間から少しでも太陽が顔を出すと、たちまち張りのある美しいさえずりを始める。それを聞いているだけで、私はそのときの明るさが手にとるように分かることに気づいた。鳥が空を教えてくれたのである。(『鳥が教えてくれた空』三宮麻由子)

視覚障害
 親類筋の女性Tがかつてネルーの信奉者だった。ネルーの思想と活動に手放しで共鳴し、親譲りの潤沢な資産を惜しげもなく注(つ)ぎ込んだ。熱烈なる敬愛の念は相手にも通じたらしく、インド独立式典への招待状が舞い込み、いそいそと出かけていった。貴賓席で待ち受けていると、憧れの君は民衆の歓喜の声に包まれて颯爽(さっそう)と登場。ボロをまとった女たちが感極まって駆け寄り壇上のネルーの靴に口付けしようとした瞬間、ネルーはあからさまに汚らわしいという表情をして女たちを足蹴(あしげ)にし、ステッキを振り上げて追い払った。周囲の囁(ささや)きから、女たちが不可触賤民(アンタッチャブル)であることを知る。その刹那、Tの「百年の恋」は冷めた。(『打ちのめされるようなすごい本米原万里

書評山際素男
 突きでた駅の屋根の下から、暗い町並みに降る激しい雨を見た。豪雨だった。雨水の流れる路面は川のようだ。駅前の広場にある樹木が風にかたむきながら揺れている。突然、あの青年の声がよみがえった。強い子だな、きみは。いや、ちがう。あの雨のなか、胸をはり、頭をあげ、ゆっくり歩いていった青年。彼こそがほんとうに強い人間だった。(『雪が降る藤原伊織
 そこには、思わず目を疑うようなこんな記述が連なっていた。
〈K機関で所掌しているタレントとの会食を通じて洗脳
〈広義な話題を提供し、問題を希釈させる〉
〈中小信用公庫等財界ラインの利用 笹川系ドン「○○氏(原文は実名、以下同)」を動かす〉
〈3月中に本社作戦、津山拠点の確保を終了 3月末から4月上旬に県南戦火 津山圏は水面下でゲリラ戦とする〉
(『原子力ムラの陰謀 機密ファイルが暴く闇』今西憲之、週刊朝日編集部)

原発
 窓からの逆光で見えにくかった彼の容貌がようやくはっきりした。まじめさ、いかめしさ、融通(ゆうずう)のきかなさ、閃きのなさを混ぜ合わせて、粘土で捏(こ)ねあげたような、叩きあげの現場の警官の典型的な容貌だった。要するに、警視庁管轄だけでも何千人もいるにちがいない警部のひとりだった。(『愚か者死すべし』原リョウ)
 近代科学の起源に関する模範的な論考のなかで、歴史家のハーバート・バターフィールドは、人口に膾炙(かいしゃ)した一つの対比を引用している。甚大な影響を及ぼした17世紀の科学革命に唯一肩を並べうるものは、キリスト教の出現を措(お)いて他にない、と。(『科学と宗教 合理的自然観のパラドクス』J・H・ブルック:田中靖夫訳)

科学と宗教
 完璧な形でマインド・コントロールが行われた場合には、すべては必然性をもったことであり、それに出会う幸運をもったのだと感じ、喜び勇んでその行動を「主体的に」選択する。(『マインド・コントロール』岡田尊司)
 宇宙は進化のサイクルを繰り返す。その各サイクルにおいて、ビッグバンが高温の物質と放射を生み出し、それが膨張冷却して今日見られる銀河や恒星が形成される。その後、宇宙の膨張が加速して物質は散り散りになり、空間はほぼ完全な真空へと近づく。そして1兆年ほど経った頃、新たなビッグバンが起こって再びサイクルが始まる。宇宙の大規模構造を作り出した出来事は、一つ前のサイクル、つまり一番最近のビッグバン以前に起こったことになる。(『サイクリック宇宙論 ビッグバン・モデルを超える究極の理論』ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック:水谷淳訳)